2008 Fiscal Year Annual Research Report
性決定様式の異なるヤモリ属2種の同所的個体群間における性比の比較と影響要因の検討
Project/Area Number |
07J08378
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山本 友里恵 University of the Ryukyus, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 温度依存性決定 / 遺伝性決定 / 性比 / TSD / GSD / ヤモリ / 沖縄島 / Gekko |
Research Abstract |
温度依存性決定(TSD)を行う生物では孵卵中の温度という環境要因によって個体の性が決定されるために,遺伝性決定(GSD)と比較すると,個体群全体が不安定ないし偏った性比となることが予想される.本研究では,異型性染色体を有し,GSDを示すミナミヤモリと,同所的に生息しかつ系統的に近くほぼ同様の形態的特徴をもつ一方で,異型性染色体を持たず,TSDを示すと考えられる未記載隠蔽種オキナワヤモリの2種を対象に比較研究を進めた.研究開始2年目である平成20年度は,これら2種の1次性比(孵化時の幼体の性比)と2次性比(成体の性比)の調査を行った.1次性比は,平成19年度の実験により得られた産卵月毎の孵化幼体の性比の値に,1産卵期における全妊娠雌数に対する各月の妊娠雌数の割合を乗ずることで算出した.2次性比には沖縄島北部で可能な限り無作為に捕獲した個体のうち,最小成熟サイズ以上のものの集団における性比を用いた.その結果,1次性比にはミナミヤモリでは有意な偏りは見られず(雄:雌=59:41),オキナワヤモリでは有意な雌への偏りが認められた(雄:雌=30:70).2次性比では両種共に有意な偏りは見られなかった(ミナミヤモリ,雄:雌=120:119;オキナワヤモリ,雄:雌=97:106).これらの結果は,GSD種では偏らない性比が終始保たれるが,TSD種では雌に偏った性比から徐々に偏らない性比に変化すること,また,性決定様式が異なることで孵化時の性比には差異が生じるものの,成体では性決定様式に関わらず性比はほぼ1:1となることを示唆している.以上のことから少なくともオキナワヤモリにおいては,孵化直後から性成熟まで期間での死亡率に性差のあることが予想される.このように雌雄どちらか(本種の場合では雌)の死亡率が高まるような何らかの要因が存在する環境下でTSDが進化するのかも知れない.
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Research Products
(2 results)