2009 Fiscal Year Annual Research Report
性決定様式の異なるヤモリ属2種の同所的個体群間における性比の比較と影響要因の検討
Project/Area Number |
07J08378
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山本 友里恵 University of the Ryukyus, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 温度依存性決定 / 遺伝性決定 / 性比 / TSD / GSD / ヤモリ / 沖縄島 / Gekko |
Research Abstract |
温度依存性決定(TSD)を行う生物では孵卵中の温度という環境要因によって個体の性が決定されるため,遺伝性決定(GSD)と比較すると個体群全体が不安定ないし偏った性比となることが予想される.本研究では,ZW/ZZ型の異型性染色体を有しGSDを示すミナミヤモリと,異型性染色体を持たずTSDを示すオキナワヤモリの2種を対象に比較研究を進めた.これら2種の1次性比(孵化時の幼体の性比)と2次性比(成体の性比)の比較の結果,GSDを示すミナミヤモリでは1次・2次性比は共に1:1から有意に偏らず,TSDを行うオキナワヤモリでは1次性比には雌への偏りが見られるものの,2次性比では1:1となることが明らかとなった.このことからTSDのオキナワヤモリにおいては,生活史上のどこかのステージで死亡率に性差のあることが予想される.この死亡率に関わると考えられる要因のひとつとして運動能力が挙げられる.そこで本年度は,孵化幼体の運動能力への孵卵温度の影響について共同研究により検討し,連名で発表を行った.その結果,運動能力はミナミヤモリでは孵卵温度の影響を受けず,オキナワヤモリでは影響を受けることが分かった.また,今回の対象種2種間で交配実験を行った結果,F1個体が得られるということを発見した.性決定様式が実験的に明らかとされているTSD種とGSD種の間でF1個体が得られるという報告は初である.ここで得られたF1個体は全てZ染色体を1本だけ持つと考えられるが,非常に興味深いことにこれらF1個体には雄と雌の両方が含まれていた.ZW/ZZ型の性決定メカニズムについては近年,鳥類や両生類を用いた研究が進んでおり,それら両分類群の間をつなぐ爬虫類でZ染色体を1本だけ持つ個体が雄にも雌にも分化することを発見したことは大変意義深く,このことは脊椎動物の性決定メカニズムの進化の包括的理解に貢献する可能性を持っている.
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Research Products
(1 results)