2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J08427
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
上山 典子 Tokyo National University of Fine Arts and Music, 大学院・音楽研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | 音楽学 / 西洋音楽史 / 新ドイツ派 / リスト / フランツ・ブレンデル / 未来音楽 |
Research Abstract |
本年度はこれまで3年間の研究の仕上げとして、博士論文(「『新ドイツ派』概念の成立--リストのヴァイマル時代(1848-1861)と『未来音楽』をめぐる論争」)を東京芸術大学大学院に提出、博士号を取得した。論文では、これまでは顧みられることのなかった「新ドイツ派」の前身、「未来音楽」の用語から概念を説き起こし、一派提唱の歴史的経緯とその後の概念の変遷を史料に即して解明した。本研究のもっとも独自な点は、これまでリストとの関連においてのみ注目されてきた「新ドイツ派」を、その提唱者であるブレンデルのコンテクストにおいて考察したことにある。そして、リスト、ヴァーグナー、ベルリオーズの「三人組」を代表者とする一派の提唱は今日に至るまで常に批判の対象となってきたが、実際のところ、その三人組は矛盾ではなく、音楽史家ブレンデルの巧みな戦略でもあったこと--すなわち、二人の外国人を含むことで、この一派が歴史的連続性のなかで生まれた新音楽の汎ヨーロッパ的動向であること、それによりドイツ音楽の普遍的性格と絶対的覇権を印象付けるために、それぞれが効果的な働きを担わされていた--という点を強調した。 上記博論の予備的、関連研究としては、ベートーヴェン作品の標題的解釈についての論文(『東邦音楽大学・東邦音楽短期大学研究紀要』に掲載)を執筆、また、1850年代の音楽論争の中心課題の一つだった、リストの交響詩とベートーヴェン交響曲の遺産継承問題に関する口頭発表を、美学会全国大会にて行った。さらに、「『新ドイツ派』とはなにか」の記事を、『フィルハーモニー』(NHK交響楽団機関紙)に寄稿した。そこでは「新ドイツ派」の概要を説明したうえで、一派の代表者とされた三人組、リスト、ベルリオーズ、ヴァーグナーの創作や音楽美学が、実際には大いに異なる傾向を示していた点を中心に解説をおこなった。
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Research Products
(3 results)