2007 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル時代におけるタイの集合的記憶と国家意識の形成に関する社会学的研究
Project/Area Number |
07J08452
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
翁川 景子 Nagoya University, 環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国家 / タイネス / アジア認識 / 日系企業 / 集合的記憶 / グローバル時代 / タイ / ナショナリズム |
Research Abstract |
本研究は、第一にタイにおける国家意識形成に関する顕在的・潜在的なプロジェクトの調査をもとに、国家概念の再検討をおこなうこと、第二に日本とタイとの(援助活動、経済活動などにおける)関連を調査することを通して、タイにおける市民社会形成について検討することが主な目的である。 第一の目的を達成するために、今日のタイを表象する言葉として用いられる「タイネス(Thainess)」をめぐる歴史的変遷についての研究を進めた。タイネスとは「タイらしさ」と意味するものとされるが、この観念の構成要素や内容は明確ではなく、ナショナリズム的な観点からも多く議論されている。私は、これについてタイと日本で収集した資料から今日のタイネスが意味しているものと、タイの国家形成に関する歴史的な議論のなかで取り上げられてきたチャートという観念との関連性を検討した。これを通して、タイネスについてはタイとASEAN諸国との関連、観光業との関連からも検討していくための基盤的考察にも着手した。 また、第二の目的を達成するために、タイ研究において長らく支配的な枠組みであった「ルース概念」について、「二重化された他者としてのアジア」という観点から再構成をおこなった。さらにこの観点を基盤とし、タイに現地法人を置く日系企業の調査をおこなった。タイの日系企業が抱えるコンフリクトは、しばしば異文化論の文脈で価値観の相違として論じられてきた。しかし私の調査結果によると、タイ日系企業においてコンフリクトと考えられてきたものの前提には、「分業における自分の仕事の領域に関する認識」に相違があったことが明らかになった。E.ゴフマンの関与概念を用いてデータを分析し、両者の分業認識に関する相違が、あいさつ運動という営みを契機に克服されていくプロセスを明らかにした。そして、それは同時に新しい集団の生成の端緒でもあることを指摘した。
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Research Products
(6 results)