2008 Fiscal Year Annual Research Report
カイラル対性に基づいたエキゾチックスとハドロン動力学の研究
Project/Area Number |
07J08538
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
兵藤 哲雄 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特任助教
|
Keywords | ハドロン分光学 / カイラル対称性 / K中間子原子核 / large Nc極限 / 国際情報交換 / ドイツ |
Research Abstract |
カイラル動力学に基づいたチャンネル結合法(カイラルユニタリー模型)でハドロン共鳴の内部構造を調べた。カイラル動力学に基づいてハドロンと核子の相互作用を導き、少数核子系への応用を行った。 1:昨年の研究で得られたカイラル動力学にKNポテンシャルと現実的核力を用いてK中間子原子核の少数計算を行い、前回の研究で取り入れられていなかった効果の見積もりを行った。具体的には、ポテンシャルの虚部が束縛エネルギーに与える効果、p波の相互作用が束縛エネルギーと幅に与える効果、2核子吸収幅、の3つを見積もった。これらの効果、特に2核子吸収幅の見積もりは他グループのK-pp系の計算では行われておらず、他の計算への応用の基礎を築いた結果である。 2:カラー数Ncを変化させてハドロン励起状態のクォーク構造を明らかにする研究をLambda(1670)にも拡張し、質量、励起エネルギー、崩壊幅のカラー数Nc依存性に関して体系的な解析を行った。既知の3クォークバリオンのNcスケーリングとカイラルユニタリー模型の予言を比較することにより、Lambda(1670)共鳴においても3クォーク成分は支配的ではなく、動力学的成分が重要であることを示唆する結果を得た。 3:カイラル動力学の枠組みで光子を結合した振幅を評価し、Lambda(1405)の電磁的性質を調べた。構造研究において光子に対する応答を調べることは基礎的であるが、ハドロン共鳴を動力学的に扱う模型では、これまであまり調べられていなかった。本研究ではゲージ不変性を破らないような定式化を行い、Lambda(1405)の電磁半径を計算した。結果として、基底状態のハドロンに比べて大きな電磁半径を得た。電荷を持たない共鳴の半径は主にメソンの雲で形成されると考えられることから、メソンの雲が大きく広がったLambda(1405)の描像を示唆している。
|