2007 Fiscal Year Annual Research Report
染色体安定化とDNA修復におけるヒストンH2AXリン酸化の生物学的機能の解析
Project/Area Number |
07J08571
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
市島 洋介 Tokyo Medical and Dental University, 大学院・医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 染色体不安定性 / DNA損傷チェックポイント / 分裂期 / 四倍体 / H2AX / 腫瘍形成 / 不死化 |
Research Abstract |
我々はヒストンH2AのバリアントであるH2AXが細胞周期依存的にリン酸化を受け、そのリン酸化は分裂期で顕著に見られることを明らかにし、報告した(Ichijima Y.et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.336:807-812,2005.)。そこで分裂期に着目し、DNA損傷チェックポイントの機能解析を行ったところ、分裂期の細胞においては、H2AX、ATM、Chk2などのDNA損傷チェックポイントに関与する因子のリン酸化は、間期の細胞より非常に強く検出された。しかし、チェックポイントの強い活性化にも関わらず、分裂期の進行は停止しないことが判った。さらに分裂期におけるDNA修復効率をγ-H2AX免疫染色とコメットアッセイにより調べたところ、分裂期ではDNA修復がほとんど行われないことが明らかとなった。 このような分裂期におけるDNA損傷応答の機能不全が腫瘍形成の原因になり得るのではないかと考え、培養細胞を用いてE2F1やCdc25Aの機能を亢進させて細胞分裂を盛んにすることで前癌状態を模倣し、分裂期のDNA損傷応答について調べたところ、γ-H2AX陽性である分裂期の細胞の割合が増加した。さらにはγ-H2AX陽性である分裂期の細胞において、細胞分裂を失敗し四倍体の細胞になってしまっているものが認められた。MEFを不死化させる実験系を用いて、分裂期でのγ-H2AX、四倍体細胞産生、細胞の不死化の相関関係を調べてみたところ、驚いたことに不死化したばかりのMEFは四倍体になっていることが判り、分裂期でのγ-H2AXの割合は不死化する直前の段階で顕著な増加が見られた。不死化したMEFの継代を繰り返していくことで、染色体の欠失が起きて、やがて細胞は四倍体から異数体になることが明らかとなった。 以上の結果から、分裂期においてDNA損傷応答は機能しないこと、分裂期でのγ-H2AXと不死化した四倍体MEFとの密接な相関関係が明らかとなり、癌で認められる特徴的な異常である染色体不安定性が生じるメカニズムの解明へとつながることが期待される。
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Research Products
(1 results)