2008 Fiscal Year Annual Research Report
チベット・ダライラマ政権を中心とする17〜18世紀の清-チベット関係の研究
Project/Area Number |
07J08574
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
片桐 宏道 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | チベット / ダライラマ / 奏摺 / 清朝 |
Research Abstract |
本研究の目的は、清朝とチベットの関係、さらには内陸アジア内の政治的・文化的な交流を念頭に置きつつ、ダライラマ政権の構造を明らかにすることである。本年度前半も、昨年度に引き続き研究指導委託によって中国人民大学(北京)に留学した。中国第一歴史档案館所蔵の奏摺や、北京大学所蔵の「撫遠大将軍王奏档」(満文)を精読することで、チベット俗人政治家や貴族にかんする知見を得た。満洲語档案を調査する過程で、特に挙げられる成果としては、ダライラマ政権の武官とも言うべきダプンmda'dponに関して、チベット語史料には見出せない記述を少なからず発見し、その職掌を理解するうえで大きな助けとなった。この成果は、帰国後論文としてまとめ、東洋史研究会に投稿し、『東洋史研究』第六十八巻第一号「ダプン考-ダライラマ政権における「武官」-」として掲載されることが決定した。帰国後、東洋文庫に所蔵されているチベット語文献である、摂政サンギェギャムツォsangs rgyas rgya mtsho(1653-1705)が1681年に著した『取捨を明らかに示す直線・水晶鏡二十一条』(blang dor gsal bar ston pa'i drang thig dwangs shel me long nyer gcig pa)の整理・読解を行った。この書は政権初期の政治体制を解明する上で重要な枠組みを提供する文献である。筆者は、一通りの訳注作業を終え、さまざまな史料に記載される書誌学的情報を整理し、その書がいかに歴史学的に利用しうるかを考察した。その成果は、現在論文として出版すべく準備中である。なお、今年度の研究費補助金は、上記の中国における海外調査費に、またチベット学関係の文献購入費に充てられた。
|
Research Products
(1 results)