2007 Fiscal Year Annual Research Report
ミメーシスの技法に関する教育思想史的研究-ロマン主義・ベンヤミン・デリダ
Project/Area Number |
07J08579
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小野 文生 Kyoto University, 教育学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ミメーシス / ロマン主義 / ベンヤミン / デリダ / ブーバー / ユダヤ / 神秘主義 / 剣道 |
Research Abstract |
本研究の最終目的は、ロマン主義、ベンヤミン、デリダという3つの定点を設定し、人間の生成・変容のメカニズムとしての「ミメーシス概念」を分析すること、そして、このミメーシスの技法を軸とした教育思想史を再構成しながら、新たな学習論・伝承技法を構想していくための思想的・哲学的基盤を提示することである。そのために、当初の予定にしたがって本年度は、特にユダヤ思想関連の文献に焦点を定め蒐集・読解・分析をおこなった。とりわけ上記の3つの定点すべてにかかわる思想的背景として重要なユダヤ神秘主義思想の研究に重点をおいた。具体的には、ベンヤミンともかかわりの深いG・ショーレムのユダヤ神秘主義研究、世紀末ウィーンやドイツの神秘主義と言語批判の潮流、そのユダヤ的展開として不可欠なM・ブーバーの思想、デリダのミメーシス理解などについて分析を進めた。現況として、ミメーシスの媒体としての「言語」が、「聖なるものと日常性」、「超越と内在」、「知と信仰」という問題系と結ぶ関係の重層性が、次第に解きほぐされつつある。その萌芽的成果の一部を、学会誌において審査付学術論文として発表した。さらに、ミメーシス研究の第一人者クリストフ・ヴルフ教授と意見交換をした。また、本研究に関連する活動として、ミメーシス概念の実践形態事例として日本の伝統的学習観を再考することにした。糸口として、剣道の「修練の思想」を題材としながら、剣道の世界観を支えるミメーシスの技法の特殊性と普遍性とを論じた。その成果は、ドイツ/アメリカにおいて英文著作として出版された。さらに、これらの個別の研究をつなぐ、より大きな研究関心と学理論的立場について、教育哲学会第50回大会記念シンポジウムで提案者として発した。その記録は当該学会誌の次号にて公表予定(印刷中)。
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Research Products
(6 results)