2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J08731
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
白川 智弘 Tokyo Institute of Technology, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 真性粘菌 / バイオコンピューティング / パターン形成 / 細胞運動 |
Research Abstract |
真性粘菌の変形体は単細胞多核の巨大アメーバである。変形体は大きく分けて、盛んに運動・探索を行うシート状のlocomotive frontと、細胞の各部位を結び、栄養の分配や情報伝達を担い、単細胞としての統一性を保つために用いられる細胞質でできたチューブの2種類に分化している。前年度までの研究で我々は、別々の箇所で構築される変形体のチューブネットワークの間に形態的な相同性が現れることを発見した("Emergence of morphological order in the network formation of Physarum polycephalum",Biophys.Chem.128,253-260,2007)。即ち同時期に形成されるネットワーク間において、ある種の協同性が存在することが見出された。そこで今年度の研究では、過去の運動とそれに伴って形成される形態が、進行中の細胞運動にどのような影響をもたらすかが実験により観察された。それにより、過去の運動の結果として形成されるチューブの配置がその先の細胞運動に影響していることを示す結果が得られた。この結果は、変形体がその運動の履歴に従ってチューブを形成することにより、チューブの状態及び配置をテンポラリーな記憶媒体として用いていることを示唆する。今後は上記現象のメカニズムを理解することを目標に、チューブ内部における原形質流動や細胞骨格のダイナミクスが、locomotive frontにおける細胞運動にどのような影響をもたらすかを調べていく予定である。
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