2007 Fiscal Year Annual Research Report
クメール美術におけるインド文化の受容と変容-12・13世紀の彫像にみる宗教混交-
Project/Area Number |
07J08749
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
宮崎 晶子 Sophia University, 大学院・外国語学研究科・地域研究専攻, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | クメール美術 / バイヨン様式 / 観世音菩薩像 / ナーガ上の仏陀坐像 / 宗教混交 |
Research Abstract |
本研究は、クメール美術の観世音菩薩像およびナーガ上の仏陀坐像に焦点を当て、図像とクメール碑文・仏典(インド・中国など)との比較検討を通じて、アンコール期(9世紀から15世紀)における宗教混交を明らかにすることを目的としている。 19年度は、上半身に多数の坐像を表現する観世音菩薩像(radiating Avalokitesvara)の総数と出土地を把握するため、フランス極東学院事務所(パリおよびシェムリアップ)で、同学院により20世紀初頭に行なわれた考古発掘の記録を調査した。なぜならこの彫像は、クメール碑文に記された「23の地に奉納されたJayabuddhamahanatha」との関連性が指摘されている彫像であり、その出土数と出土地が問題となるからである。その結果、現在の所蔵場所が不明なものも含め、18体の石像が確認できた。またこの彫像は、アンコール期の中心地であるシェムリアップ以外に、辺境の遺跡からも確認されており、当時の版図拡大の動きの中で何らかの役割を担っていた可能性が指摘できる。 また、ナーガ上の仏陀坐像に関しては、12世紀のアンコール・ワット様式に特徴的な「宝冠仏」で表現されているナーガ上の仏陀坐像に注目し、インド・パーラ朝やビルマ・パガン朝の宝冠仏との関連性を調査した。クメール美術のナーガ上の仏陀坐像は11世紀に出現したのち、13世紀のバイヨン様式まで、つまり上座部仏教が隆盛するまでの間、作り続けられた彫像である。ヒンドゥー教が主流であったアンコール・ワット様式の時代にも、また大乗仏教が主流であったバイヨン様式期にも信仰され続けた彫像であり、それらの宗教性を超えた存在であるといえる。宝冠仏が確認できるパーラ朝、パガン朝そしてアンコールに共通する社会背景や宗教を把握し、ナーガ信仰を明らかにすることによって、この彫像にどのような信仰があったのか理解できると考えている。
|
Research Products
(2 results)