2007 Fiscal Year Annual Research Report
言語とアイデンティティー-ウズベキスタンの言語政策とコミュニティ社会-
Project/Area Number |
07J08762
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
BAKHRONOVA MUNISA The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 言語 / アイデンティティー / コミュニティ社会 / マハッラ(地域共同体) / 旧ソ連中央アジア |
Research Abstract |
本研究の目的は、ウズベキスタンの言語政策が、コミュニティ社会における諸民族の言語生活に与える影響を、現地調査を通して明らかにすることである。これによって、言語使用の変化が、諸民族の民族意識やアイデンティティーの形成にどのように関わっているのかを検討する。具体的には、特定のマハッラ(地域共同体)を選択し、そこにおける社会生活の中での言語使用の状況を包括的に把握するという手法をとることで、言語政策がコミュニティ社会に与える影響を詳しく検証することを計画している。ウズベク語の使用される局面が増加しているのは明らかであるが、それは、意思疎通の手段として用いられる機会が増えたということに過ぎないなのか、それとも、民族意識やアイデンティティーの変化の現れであるのかを見極めたい。 平成19年10月31日から11月の28日まで29日間、ウズベキスタンのタシケント、サマルカンドにて現地調査を実施した。まず、11月1日から11月22日まで、主な調査対象地であるサマルカンドにおいてマハッラのリーダーや責任者を対象にインタービューを実施した。サマルカンドのマハッラは地域によってマハッラの民族的・言語的構成が異なり、一つのマハッラだけに偏った調査にならないように、4つの伝統的なマハッラを選択し、調査を開始した。それらは、Xuja・Zudmurodマハッラ(タジク人が主に居住する)、Qoraboy Oqsoqolマハッラ(タジク人、ユダヤ人が居住する)、Ozodマハッラ(ジプシー、タジク人が居住する)、Obodマハッラ(トゥルクメン人とタジク人)である。4つのマハッラそれぞれのリーダーに会い、マハッラについての基礎情報やマハッラの住民についての基礎データを収集した。 次に、マハッラの研究で箸名なサマルカンド国立外国語大学教授のSamiboev Xurshed氏に会い、現地における近年のマハッラ研究状況について情報を得た。11月23日から28日までは、タシケントにあるljtimoiy Fikr(Public Opinion Study Center)の責任者に会い、現地におけるマハッラ研究に関する図書についてうかがった。ウズベキスタン国内でマハッラについて研究・出版された文献や統計を収集することができた。 ただし、ウズベキスタンにおいては、この時期、大統領選挙が近かったため、公にマハッラの住民を対象にした大きな質問票調査などを実施することは困難であった。日本においては、文献サーベイを進めるだけでなく、これまでの研究成果を踏まえた論文執筆・投稿や、研究会における発表を行った。また、アウトリーチ活動として複数の講演も実施した。
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