2009 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム複製開始因子の活性制御を中心とした複製と転写の制御ネットワーク解析
Project/Area Number |
07J08897
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中村 賢太 Kyushu University, 大学院・薬学研究院, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 大腸菌 / DnaA / ヌクレオチド / Hda / 相互作用 / AAA+ family / 複製装置 / 細胞周期 |
Research Abstract |
大腸菌の染色体復製開始反応はDnaA蛋白質に結合するヌクレオチドによ制御を受ける。ATP-DnaAは、DNAに装着した複製装置クランプとHda蛋白質からなる複合体と結合することで、結合するATPの加水分解を受ける。生じたADP-DnaAは複製開始活性をもたない。このようなDnaA不活性化機構をRIDAという。 報告者は、RIDAにおける蛋白質間相互作用解析を行なった。その結果、HdaとDnaAの相互作用領域をアミノ酸レベルで同定することに成功した。これら同定したアミノ酸残基のアラニン置換変異体は、細胞内、試験管内の両方でRIDA活性を欠損していることを見出した。これらの成果は、国際学会(poster award)、英語論文として発表した。 さらに報告者は、Hda蛋白質の活性調節機構についても解析を行なった。報告者らは、Hda蛋白質がADPと結合することで活性型になることを見出している。今年度は、RIDAに必要なクランプ蛋白質がHdaに結合したADPを解離することを見出した。RIDAの際には、クランプはDNAに装着する必要がある(DNA装着型クランプ)。報告者らは、DNAに装着していないクランプがHdaに結合したADPを解離することを、精製蛋白質を用いた解析から明らかにした。クランプは、DNA複製が行なわれる時にのみDNAに装着される。ADP解離反応は、DNA装着型クランプでは起こらなかったことから、DNA複製が起こらない時にのみ、Hdaに結合したADPが解離され、RIDAが抑えられることが示唆される。実際に、クランプと結合できないHda変異体を細胞内に発現させると、Hdaと共回収されるADP量の増加が見られた。このことから、細胞内でもHdaはクランプと結合することでADPが解離すると考えられる。クランプは、新生鎖合成を行なうDNAポリメラーゼのサブユニットであり、これまでDNA上でのみ機能すると考えられてきた。本成果は、クランプがDNA上以外でも機能し得るという新しい概念を提唱するものである。また、大腸菌などの原核生物のみならず、ヒトのような真核生物にもクランプは存在する。従って、クランプがDNA上以外でも機能するという新概念は、全ての生物種に適応可能な生命現象であると位置づけすることができる。以上の成果は、国内学会(口頭発表)で発表済みである。
|
Research Products
(4 results)