2008 Fiscal Year Annual Research Report
近代天理教における「病気直し」と朝鮮布教に関する研究-近代日韓交流の視点から-
Project/Area Number |
07J08965
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
金 泰勲 Ritsumeikan University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 天理教 / 病気直し / 民衆宗教 / 植民地布教 |
Research Abstract |
本年は採用二年目として、論文「明治二〇年代における天理教批判文書の検討-せめぎあう信仰と「神道非宗教論」の行方-」(『日本思想史研究会会報』第26号)を発表した。明治二〇年代において、主に仏教者たちによって刊行された天理教批判文書を分析した。従来の研究ではそれらの批判文書が、淫し邪教としての天理教イメージを強調するものにすぎないといった観点から史料的価値はそれほど認められてこなかった。しかし、それらの批判文書を明治二〇年代という時代のなかで、宗教をめぐる言説のせめぎあいの側面から分析すれば、新たな視点の提示が可能となることを論証した。それは「神道非宗教論」の民衆的展開の様相がみてとれる、という視点である。「神道非宗教論」に関しすは、明治二〇年代は「神社政策の不活発期」といわれ、それまで政界、神道界や仏教界の知識層の間で議論されていた「神道非宗教論」が国家神道体制の展開過程のなかで空白のままになっていた。それに対し、本論文では、「一八八二年の神官・教導職の分離をもって、「神道非宗教論」は、為政者・神道家・仏教者それぞれの思惑が異なる点はあったにしても、日本社会の上層部において形成されていた。そしてそれが民衆レベルの生活問題として下りてくるのは、明治二〇年代にかけての、宗教集団間における利権・権力をめぐるせめぎあいの過程のなかで、自集団のアイデンティティを確立させるため、または他者を批判するための、超越的外部として措定されることによって初めて定着していく」といった結論を出しか。 この外、天理教の植民地朝鮮・台湾布教に関する史料調査を行い、関連学会で報告した。特に、2008年10月25日に台湾で開かれた国際漢学検討会では「戦前天理教の台湾布教について-朝鮮布教との比較から-」というタイトルで口頭発表し、台湾の研究者だちからも高い関心を得た。報告では、戦前の天理教における台湾布教と朝鮮布教を比較しつつ、両者の差異点と特質を明らかにし、植民地政策との関連から天理教の植民地布教様相を分析した。
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Research Products
(5 results)