2007 Fiscal Year Annual Research Report
ペルー南部の民間医療の現場をめぐる包括的研究:クスコにおけるクランデリスモの諸相
Project/Area Number |
07J08980
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 年正 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 民間医療 / 都市 / クランデリスモ / クスコ / ネットワーク / クランデーロ |
Research Abstract |
本研究の目的は、ラテンアメリカで実践されている民間医療の一種であるクランデリスモが、ペルーのクスコという都市においてどのように機能しているのかを明らかにする一方で、クランデリスモを通して人々が作り上げる社会関係を描き出し、クスコという都市が現在どのように創り上げられ存在しているのかを明らかにすることにある。 本年度の前半(4月〜9月)では、理論的枠組みの構築と、現地におけるフィールド調査の枠組みや調査法自体の文献研究を行い、後半(10月〜3月)には現地調査を行った。 前半は、クランデリスモを社会的現象として考察する土台として、人々のネットワークや社会圏について研究した。特に拡大パーソナルネットワークや弱い紐帯といった概念を用いたクランデリスモ研究に対する可能性を見出した。そしてこれらの考えから、調査対象の範疇を明確にした。また人々の生活世界におけるネットワークという視点から、都市を考察する理論的枠組みとしての現象学を研究した。ハイデガーやレルフのような考え方から、そしてギデンズが指摘するように、「環境として都市を見るのではなく、都市そのものを問う」という知見を明確にした上で、クスコという都市を、クランデリスモという現象から考察できる可能性を明らかにした。 後半の現地調査では、クスコの都市部において民間医療に対する認識をランダムに聞き取った。そこでは、各家庭において実践されている民間医療とその知識の一端が判明した。しかし人々が用いる植物に対する発言から、「われわれ」と「かれら」の間には「薬草」に対する認識に差があることが明らかになった。 他方、クランデリスモの諸アクターとなる人々に聞き取りを行うことにより、彼らがクランデリスモに対してある一定の共通の知識(認識)を有すること、それがクスコという場所に根ざしているということが明らかとなった。 また、先行研究において報告されていない近代医療をつかさどる、病院とクランデーロとのつながり、その病院における「伝統医療」というセクションの存在、それと政府との関係が判明した。
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