2009 Fiscal Year Annual Research Report
身体化による自己意識とその障害としての精神病理の関係-統合失調症を中心に-
Project/Area Number |
07J08987
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅井 智久 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 統合失調型パーソナリティ / 統合失調症 / 自己主体感 / 順モデル / 行為の予測 / 発話 / 幻聴 / 自他帰属 |
Research Abstract |
●背景 統合失調症の特に陽性症状は,行為における予測的な情報処理の障害である可能性が指摘されている(統合失調症は健常者との連続性を仮定できるという観点から,統合失調型パーソナリティの傾向の高い大学生を対象とした実験的課題を行い,両者の関係を検討した。 ●研究1 ・まず48名の健常大学生を対象に統合失調型パーソナリティを測定する質問紙であるSPQBや幻聴傾向を測定するAHESなどを用いて統合失調型パーソナリティの傾向を測定した。 ・続いて,統合失調型パーソナリティの高い人は「自己行為の予測」に異常が見られるかを、マイクとヘッドホンを用いた発話主判別課題によって検討した。実験参加者はディスプレイに呈示された単語を発声し,返ってきた聴覚フィードバックの発話主を判別した。 ・結果を分析した結果,統合失調型パーソナリティ傾向(特に幻聴傾向)が高い人ほど,変換された聴覚フィードバックの中から無変換の自己声を検出するのが困難で,さらに発話主を自己へと帰属しにくいことがわかった。 ●研究2 ・研究1と同じ48名の健常大学生を対象として,統合失調型パーソナリティの高い人は「予測的な発話」に障害が見られるかを検討するためにスピーチトラッキング課題を行った。実験参加者は自己声が聞こえない環境下にて,ヘッドホンを通じて呈示される音声刺激の真似をして発声をし,両者の類似度を計測することによって,予測的な発話の精度を測定した。 ・結果を分析した結果,統合失調型パーソナリティ傾向(特に幻聴傾向)が高い人ほど,自己声のフィードバックがあってもなくても,ターゲット音声をトラッキングする成績に違いが見られないことが分かった。これは返されるフィードバックを自己へと帰属していないためであると解釈された。 ・研究1と2の成果を合わせて論文化を行い,現在,国際誌に投稿審査中である。
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