2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J09000
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂井 延寿 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | スピントロニクス / 酸化物 / 希薄磁性半導体 |
Research Abstract |
平成20年度には、前年度までの研究で明らかとなった、鉄ドープ二酸化チタン系における磁性、輸送特性、価数の関係が、他のドーパント(コバルト、ニッケル、クロム)においても成り立つかどうかに注目して研究を進めた。その結果、いずれの系でも、鉄ドープ系の場合と同様の傾向を示すことを見出した。室温強磁性はコバルト、ニッケルドープの二酸化チタンにおいて観測され、還元雰囲気で作製した膜でのみ強磁性を示した。一方で、クロムドープ試料では最も還元雰囲気で作製した試料に関しても常磁性のままであった。強磁性試料の電気抵抗は金属的電気伝導を示し、常磁性試料とクロムドープ試料では全て絶縁体的な挙動を示した。また、コバルトとクロムに関してX線吸収スペクトルを測定した結果、強磁性コバルトドープ試料の磁性原子の価数は2価であった。一方、常磁性試料では磁性イオンは3価または2価3価の混合原子価をとっていた。以上の結果は、強磁性の発現には金属伝導が必須であるという磁気ポーラロンモデルに即した結果である一方、このモデルでは考慮されていない、磁性原子の価数との関係も示唆された。実験結果を踏まえて、遷移金属ドープ二酸化チタンにおける強磁性は、2価の磁性イオンと酸素欠損をポーラロン中心とする磁気ポーラロンモデルによって記述できると結論した。この結果は希薄磁性酸化物の室温強磁性が磁気ポーラロンモデルで記述することが出来ることを初めて実験的に示したものであり、希薄磁性酸化物における室温強磁性の起源の解明につながることが期待される。
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