2007 Fiscal Year Annual Research Report
教育的コミュニケーションの言語論的研究-後期ウィトゲンシュタインをてがかりに
Project/Area Number |
07J09038
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 福太郎 The University of Tokyo, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 教育的コミュニケーション / 後期ウィトゲンシュタイン / 言語ゲーム / 人間学 / 子ども観 |
Research Abstract |
本研究はウィトゲンシュタイン〔Ludwig Wittgenstein 1889-1951〕の後期哲学をてがかりとした、「教育的コミュニケーション」に関する基礎理論の構築を目的としている。本年度は以下のような問題意識の下、上記の目的を遂行するための具体的な方法論の提示を行った。 数あるコミュニケーションのなかで、あるものを特に「教育的」コミュニケーションとして抽出するためには、当の「教育」もしくは「教育的」といった概念の意味内容に関する一定の理解が必要不可欠である。しかし、1980年代、とりわけ社会学の領域から教育の自明性に対する疑義が発せられて以降、「教育」とは何かという問いに答えることは困難に、あるいはこの問いを引き受けること自体が教育学にとっての重要な課題にさえなっている。 このような学問状況の下でなおも「教育的コミュニケーション」理論の構築を行う際に取り組むべき課題として、本年度は次の二つを設定し、それぞれ翻訳と論文執筆および学会発表とを通じて応答を試みた。すなわち、(1)教育学と他の諸学問分野との関連性の解明、(2)「教育」あるいは「子ども」といった教育に関わる諸概念を相対化するための方法論の提示、である。 第一の課題への取り組みを通じて、教育学を広義の学問連関において相対的に位置づける必要性の認識とともに、この要求への人間学的あるいは哲学的な観点からの示唆を確認することができた。また、第二の課題に関しては、従来の教育学的諸解釈においては言及されることのなかったウィトゲンシュタイン「言語ゲーム」論の方法論的側面に焦点を当て、これを教育に関わる諸概念についての、我々の日常的な前理解を浮き彫りにするための方法論として再定位した。 以上、本年度の研究成果および意義としては、「教育的コミュニケーション」理論を最も基礎的なレベルから構築する際の前段階的準備作業を遂行し、さらにその具体的な方法論を提示したことが挙げられる。
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Research Products
(4 results)