2007 Fiscal Year Annual Research Report
社会不安の発生メカニズム-視覚的注意・認知のコントロール不可能性に関する研究
Project/Area Number |
07J09039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
守谷 順 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 社会不安 / 注意コントロール能力 / 注意の処理資源 / 知覚的負荷 / 感情 / 脅威刺激 / 認知コントロール / 空間的注意 |
Research Abstract |
今年度は、社会不安の発生メカニズムの1要因と考えられる視覚的注意のコントロール能力と、社会不安に見られる脅威刺激への注意の原因と考えられる注意の処理資源について実験を行い検討した。Attention Network TestとPosner課題を用い、社会不安と注意コントロールの困難性との関連について調べた。また、研究計画通りにLavieの知覚的負荷課題を実施し、社会不安の強い人が注意の処理資源が多いか検討した。 大学生を対象に実施したところ、非感情的・感情的な刺激に対しては、社会不安の強さによらず注意のコントロール能力は同じである可能性が得られた。しかし、自分が注意を向けた場所とは違う場所に目的の刺激が出現したとき、社会不安が強い人ほど顕著性の強い刺激(明るい刺激や脅威的な刺激)に注意が向きやすいことが明らかとなった。つまり、社会不安傾向の人は、注意のコントロールが役に立たない状況に置かれると、より脅威的な刺激に自動的に注意を向ける可能性が示唆された。今まで言われてきたような、単純に社会不安者が注意のコントロールが困難であるという考えに疑問を投げかける研究であり、現在も更に詳しく検討中である。 注意の処理資源に関しては、社会不安傾向が強い人ほど注意の処理資源が多いことが明らかとなった。つまり、社会不安が強い人ほど無意識的に多くの情報を同時に処理しており、目的とは関連のない刺激まで知覚していると考えられる。この結果は、高社会不安者が多くの情報の中からすばやく脅威的な刺激を見つけ処理する原因であると考えられる。すなわち、何か目的の刺激に十分注意を向けていても、処理資源が多いために注意を向けていない顕著な脅威刺激も同時に処理してしまう。その結果、脅威刺激へと注意が移ってしまう可能性が考えられる。これらの結果は、EysenckらのAttentional Control Theoryで提唱されていたことを実験的に明らかにした初めての研究である。
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Research Products
(4 results)