2007 Fiscal Year Annual Research Report
ボードレルと「詩人の形象」の問題:19-20世紀における文学の社会的機能の研究
Project/Area Number |
07J09051
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 綾 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ボードレール / 詩人的形象 / 群衆 / フランス・ロマン主義文学 / 文学の社会的機能 |
Research Abstract |
フランス・ロマン主義文学が担った社会的機能とその変容について「ボードレールにおける詩人と群衆:フランス・ロマン主義文学の社会的機能とその変容に関する一考察」と題し日本フランス語フランス文学会秋季大会にて口頭発表を行った。文学史家ポール・ベンシューの著名なラーゼにあるように、文学とはフランス革命によって教会権力が失墜した「世俗化」の時代において宗教的権威を担うものであり、その背景には、神という超越性か制度時に保証されなくなった時代にいかに個人と社会との間の有機的連結を保つかという問いがあった。ここからフランス・ロマン主義文学の社会的機能を規定されるが、ロマン主義の第一世代に遅れてやってきたボードレールにおいては芸術による社会と個人の「綜合」はもはや不可能でありそのようなアポリアに対してボードレールはその詩学を通してひとつの応答を行った。後期の散文詩「群衆」のなかで語られるのは、群衆と一体化する詩人の姿である。しかし、真の群衆経験は、群衆によって詩人の優位が脅かされる経験であり、そこでは群衆はもはや自然のように物言わぬ「一魂(マッス)」であることをやめる。本発表においては、このような群衆経験の両極性をエゴーとボードレールの群衆経験の差異から明らかにした。 また、ボードレールと「詩人の形象」という包括的テーマから導ま出される主要な論点(20世紀フランスおよびドイツにおけるボードレール受容についての調査結果等)をまとめ、「ボードレール精神:詩人の形象の社会的機能(Le mythe Baudelaire : latmotion sociale de la figue de poite)」の題で埼玉工業大学人間社会学部紀要第六号に論文発表を行った。
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Research Products
(2 results)