Research Abstract |
近年の科学技術の進展に伴い,ロボットは人間の代わりに仕事をする存在として,産業分野のみならず,危険作業,災害救助,医療,家事など様々な場面での活躍が期待されている.この期待に答えるには,ロボットが自ら状況判断(自律制御)をし,他のロボットと協力(協調・分散制御)し,時々刻々と移り変わる環境に適応(実時間制御)することが望ましい.本研究では,これらの要件を満たす,「実時間自律分散型マルチエージェント環境」における有益な知識の発見を目的として,機械発見手法の研究に取り組む. 最終年度は,目標とするシステムの理論的基盤の構築を目指して,計算学習理論の立場からシステムの定式化を行い,その定式化されたモデル上での学習・発見の難しさの解析も同時に進めた.特に,これまであまり理論的立場から研究が行われてこなかった「実時間性」という実践的課題について真正面から取り組み,この分野における新たな研究トレンドの開拓を目指した.「実時間性」とは,ある特定の時間内に特定の処理を行うことをいう. 本研究では,例数制限付き教示の複雑さを定式化し,3つの概念クラス(単調単項式,空概念を除く単項式,単項式)についての解析を行った.得られた結果は,時間が限られている状況で物事を説明するときに,なるべく説明を簡略化し,場合によっては多少の嘘を交えたほうが相手に趣旨が伝わりやすいという経験則と一致した.自然に定義されたモデル上で,単項式のような自然な概念クラスを教示するときに,人間の自然な振る舞いが現れている点は理論モデルとして美しく,国内外から高い評価を得た.実際,国外では学習理論関連(査読付き)国際会議の最高峰であるCOLT 2009に採択され,国内では電子情報通信学会総合大会COMP学生シンポジウムの招待講演の依頼を受けた.
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