2007 Fiscal Year Annual Research Report
低金属欠乏星の起源と宇宙初期における星形成が銀河進化に及ぼす影響の研究
Project/Area Number |
07J09123
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長倉 隆徳 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 低金属量星 / 第一世代星 / 超新星残骸 / 星間物理 / 初期宇宙 / 星形成 / 星形成フィードバック / 第二世代星形成 |
Research Abstract |
初期宇宙で超新星爆発が起こったとき、周囲のカスの進化を流体計算を用いて調べました。研究計画通り流体計算コードを開発し、初期宇宙での超新星シェルの詳細な計算をしました。この計算により、超新星により形成される薄いシェルの構造を詳細に調べることができました。研究計画にあるとおり、宇宙の重元素量を変えて、その効果を調べました。その結果、超新星シェルが周囲の圧力低下により、シェル中心でガスが膨張することを明らかにしました。先行研究では、シェル内部のガスは、水素分子またはHD分子により宇宙背景放射の温度にまで冷えると考えられていましたが、実際にはシェル中心は分子の冷却ではなく断熱膨張によって冷えることが新たに分かりました。また、膨張によりHD分子が十分に形成されなくなること、低温での宇宙背景放射によるガスの加熱は十分に起こらないことを新たに明らかにしました。さらに、重元素量が多い場合の計算も行い、重元素量が太陽組成の100分の1程度存在する場合、シェル内部の宇宙背景放射によるガスの加熱が有効に働くことを新たに見出しました。私の計算により、シェル中心でのHD分子の役割と重元素量の役割をはっきりさせることができ、私のこの研究は大きな成果の1つといえます。さらに、私の詳細な計算結果と、線形解析によるガスの分裂条件を考慮して星形成条件を導きました。これにより、以前考えられていたほど単純に星形成が誘発されないことが分かりました。このことは初期宇宙の星形成率に対して大きな制限を与えるとともに、銀河形成シナリオに対して大きな貢献をしたと考えられます。これらの研究成果は、海外では国際会議 First Stars IIIで、国内では2007年度日本天文学会秋季年会で発表し、大きな反響がありました。これらは、平成19年度の研究計画通りにきちん遂行できました。研究計画どおり研究が進んだため、研究会などで指摘された点を詳しく調べ、研究の幅を広げました。現在、これらの研究結果を論文にまとめている最中でありますが、研究は全体としてほぼ研究計画通りに実行できました。
|
Research Products
(2 results)