2009 Fiscal Year Annual Research Report
新奇機能性材料を目指したクラスター蒸着基板界面の電子状態の解明
Project/Area Number |
07J09235
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中村 恒幸 Keio University, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | クラスター / 電子状態 / 2光子光電子分光 / 金属ナノ粒子 / 表面プラズモン共鳴 |
Research Abstract |
クラスター蒸着基板界面の電子構造の解明に向けて,基板上のナノ構造体の,特に吸着誘起の電子状態を測定するためのモデル系として,金属ナノ粒子蒸着基板の測定を詳細に行った。前年度の測定をさらに拡張し,本年度では銀ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴が光電子放出を増強する機構の解明を行った。Ti : Sapphireレーザーの第二高調波を用い,局在表面プラズモン共鳴に対応する光子エネルギーでの2光子光電子分光測定を行った。微分型電気移動度粒径選別器(DMA)を用いて粒径選別した銀ナノ粒子を基板に蒸着することで,銀ナノ粒子の粒径を揃え,かつ蒸着量を制御することに成功した。基板は平坦かつ化学的に不活性な水素終端シリコン基板[H-Si(111)]を選択した。蒸着前の水素終端シリコン基板と比較すると,銀ナノ粒子を蒸着した基板では表面プラズモン共鳴に対応する光子エネルギーでその光電子数が著しく増大した。レーザーパワー依存性を調べることで,2,3光子吸収による光電子放出に加え,4光子吸収に基づく光電子放出が見られることを確認した。金属ナノ粒子の蒸着量を変化させると,全体的に光電子数は増加した。光電子の放出角依存性,仕事関数,偏光依存性から蒸着量の少ないときにはH-Si(111)基板由来,蒸着量の多いときには銀ナノ粒子由来の光電子が増強されることを初めて見出した。4光子光電子放出過程や基板由来の光電子増強といった特徴的な現象は,銀ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴によって発生した近接場光によるものであることを明らかにした。このように基板と,基板上のナノ構造体とを分離して電子状態を明らかにしたことで,クラスター蒸着基板界面の電子構造の解明に成功したといえる。
|
Research Products
(5 results)