2007 Fiscal Year Annual Research Report
樹木分化中木部における細胞死発現機構の細胞生物学的研究
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07J09327
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
半 智史 Tokyo University of Agriculture and Technology, 大学院・連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 細胞死 / 細胞分化 / 放射柔細胞 / 放射仮道管 |
Research Abstract |
アカマツ(Pinus densiflora)放射仮道管の細胞死過程を明らかにするために、核、微小管、アクチンフィラメントや液胞などの細胞小器官に着目して、放射方向に連続して配列している分化中放射仮道管における細胞小器官の変化を形成層から細胞死に至るまで光学顕微鏡や共焦点レーザ走査顕微鏡により解析した。その結果、細胞の伸長と拡大、二次壁の肥厚、有縁壁孔の形成を行なっている時期には細胞死の兆候がないが、アカマツ放射仮道管に特徴的な鋸歯状肥厚の形成後、まず微小管と液胞が消失し、その後アクチンフィラメントの消失や核の分解などが速やかに起こることが明らかになった。細胞小器官の消失に順番があることは、放射仮道管の細胞死進行時におけるそれぞれの細胞小器官の働きの違いを示しているといえる。この結果は、第57回日本木材学会大会(広島)において発表し、現在論文を投稿中である。また、広葉樹放射柔細胞における細胞死出現パターンを明らかにするため、交雑ポプラ(Populus sieboldii×P.grandidentata)とユーカリ(Eucalyptus globulus)を用いて、核、デンプン粒、脂質やタンパク質などの細胞内容物に着目し顕微鏡観察を行なった。放射柔細胞の細胞死は針葉樹と同じく細胞間にばらつきが存在し、道管要素と壁孔を形成する接触細胞において最も早く細死が起こった。その後、接触細胞が存在する細胞列の放射柔細胞において細胞死が起こり、続いてそれ以外の細胞列の放射柔細胞において細胞死が起こった。また、これら細胞死のタイミングの異なる細胞間で貯蔵物質の量が異なっていた。針葉樹と同様に広葉樹においても、放射組織内における位置や接する細胞の違いが細胞死のタイミングや細胞の機能の違いを生じさせる重要な因子であるといえる。この結果は、第58回日本木材学会大会(つくば)において発表した。
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Research Products
(5 results)