2007 Fiscal Year Annual Research Report
深海化学合成生態系固有動物種群の分散過程の推定と海洋生態系における役割の検討
Project/Area Number |
07J09339
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Research Fellow |
嘉山 裕美 (渡部 裕美) Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 極限環境生物圏研究センター, 特別研究員
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Keywords | 化学合成生態系 / 化学合成生物群集 / 幼生分散 / 集団遺伝学的解析 / プランクトン群集解析 |
Research Abstract |
深海化学合成生態系は,地球生物圏の多くを占める深海生態系の中で唯一,化学合成一次生産によって有機物供給を行っている場である.本研究は,集団遺伝学的解析,プランクトン群集解析,安定同位体比・脂肪酸分析の手法を利用して,特殊な生態系として注目される深海化学合成生態系が,海洋生態系全体に与える影響を検討することを目的としている.本年度は,このうち集団遺伝学的解析から化学合成生態系固有種動物群の幼生分散過程および現在,幼生分散が可能な範囲を推定することを中心に研究を実施した.本年度の研究対象とした主な動物群は,化学合成生態系に固有であるハイカブリニナ科の腹足類と,化学合成生態系だけでなく一般的な深海生態系にも分布するクダマキガイ科の腹足類である.いずれの分類群に関しても,各海域に分布する集団から各種20個体を目安にミトコンドリアDNAのCOI遺伝子領域の部分塩基配列情報を収集し,集団の遺伝的多様性と他の海域集団との遺伝的交流の有無について検討した.この結果,いずれの分類群も,化学合成生態系固有種も一般的な深海底や潮間帯に生息する分類群と同等程度の遺伝的多様性を維持しており,それぞれの分類群が構成する集団サイズが実際に潜水調査船等によって観察されているものよりもずっと大きいことが示唆された.これらのことは,化学合成生態系固有種の生物量が海洋の中で無視できない存在である可能性を示唆している.また,深海底に断続的に分布する集団間でも遺伝的交流が確認され,化学合成生態系固有動物種群は化学合成生態系以外の環境中を分散することが示唆された.
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Research Products
(7 results)