2007 Fiscal Year Annual Research Report
脳機能発達に対する環境化学物質の影響と攪乱標的の一つ甲状腺ホルモンの機能解明
Project/Area Number |
07J09373
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
高橋 理貴 Aoyama Gakuin University, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 甲状腺ホルモン / 小脳 / 発達 / プログラム細胞死 / 細胞周期 / 発現解析 |
Research Abstract |
本研究の目的は、身体各器官の正常発達に必須な甲状腺ホルモンの脳機能発達における役割の解明、ならびにこれを攪乱標的とすると考えられる環境化学物質の一つ水酸化PCBの胎生期暴露が新生児脳に与える影響を明らかにする事である。本年度は研究計画に記載した通り、甲状腺ホルモンの脳機能発達における役割解明のための実験を行った。まず、ICRマウスを使用し、正常群、メチマゾール(MMI:0.025%)を妊娠期(妊娠15日目〜サンプル回収時)から飲水投与した甲状腺機能低下症群、これに甲状腺ホルモンを背部皮下(T4 20ng/g b.w/day)から注射する回復群、正常群に甲状腺ホルモンを背部皮下(T4 20ng/g b.w/day)から注射する過剰投与群の4群を作製した。全群で生後3日目にBrdU(0.5mg)を皮下注射し凍結切片を作製し、抗BrdU抗体、抗activeCaspase3抗体とTUNEL法を用いて生後4日目小脳における細胞新生や細胞死への影響を調べた。更に同時点でウエスタンブロット法によりp75ntr、sort1の蛋白量、ELISA法によりリガンドとなるNGF、BDNF、NT3の定量を行った。その結果、遺伝子発現レベルではin vivo(生後4日目)においてp75ntr,sort1が甲状腺ホルモン応答性遺伝子であり、タンパクレベルにおいてもsort1が顕著な応答性を示した。また小脳顆粒細胞を無血清培地下で初代分散培養(in vitro)に供し、甲状腺ホルモン添加(100nM)の有無による遺伝子発現変化を調べた結果、sort1はin vitroにおいても甲状腺ホルモン応答性遺伝子であることが分かった。一方、神経栄養因子群は若干の応答性を示したが有意な変化ではなかった。次いでこれら因子の変化が齎す細胞周期、細胞死に対する影響を調べたところ、現在までに報告のある低下群での細胞死ではなく、過剰投与群における顕著な細胞死の増加をin vivoにおいて確認することができた。以上のことから、甲状腺ホルモンがプログラム細胞死を制御しており、またこの作用は時期・組織特異的なものであることを明らかにした。この結果を学会発表し、論文にまとめ投稿した。
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Research Products
(3 results)