2008 Fiscal Year Annual Research Report
被害観念の生起メカニズムおよび被害観念がもたらす感情・行動についての実証的研究
Project/Area Number |
07J09388
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山内 貴史 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 被害観念 / 被害妄想 / スキーマ / 脆弱性 / 因果関係 |
Research Abstract |
統合失調症は精神科入院患者の8割を占める精神疾患である。被害妄想は統合失調症の代表的な症状である。近年,被害妄想様の内容の観念(以下,被害観念とする)は健常者にも高頻度でみられることが明らかにされている。しかしながら,被害観念に関する先行研究では,自己および他者への根本的認知であるスキーマなどの脆弱性と被害観念との因果関係が検討されていない。そこで,本年度は,昨年度申請者が作成したthe Brief Core Schema Scales(Fowler et al.,2006)の日本語版(山内他,2009)を用いて縦断調査を行うことにより,他者へのネガティブなスキーマと被害観念との因果関係について検証した。大学生102名を対象に,約1ヶ月の間隔で2回にわたる縦断調査を実施した。調査1回目(Time 1)では被害観念およびスキーマが,2回目(Time 2)では被害観念と2回の調査間に体験したストレッサーを測定した。Time 2の被害観念得点を基準変数とし,Time 1の被害観念得点,スキーマ得点およびストレッサー得点,最後にスキーマとストレッサーの交互作用項を説明変数として3ステップで投入した階層的重回帰分析の結果,スキーマとストレッサーの有意な交互作用が確認された。交互作用の内容を検討した結果,ストレッサーを多く体験した場合に,他者へのネガティブなスキーマが強い者は,スキーマが弱い者よりも被害観念が強まることが示唆された。今後調査間隔をより長くした縦断調査を行う必要はあるものの,本研究の結果は,他者へのネガティブなスキーマが被害観念の形成・持続の脆弱性要因となりうることを示唆するものと考えられる。
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Research Products
(4 results)