Research Abstract |
昨年度の研究から,人工軟骨候補材料ポリビニルアルコール(PVA)ハイドロゲルの低摩擦化には,リン脂質:ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)が一つの重要な機軸となることが確認された.そこで本年度は,DPPCの境界潤滑性への寄与を調べるため,以下の系統的評価を行った. 1.DPPC0.01wt%水溶液を潤滑液とした場合,摩擦係数が二面性を示したが,低摩擦を示した場合,DPPC多分子膜からなると思われる平滑な境界膜が形成された.そこで,ガラス表面に平滑なDPPC二分子膜を作成し,摩擦試験を行った.その結果,生理食塩水中では二分子膜の無い場合と比較して顕著に摩擦が低減しか.一方,アルブミンまたはγ-グロブリンのみを添加した潤滑液では,初期摩擦に顕著に低減したが,滑り距離の増加に伴い,DPPC二分子膜の無い場合と同程度まで摩擦は上昇した. 2.DPPCとアルブミンの共存下では,平滑なフィルム状薄膜の形成が確認され,他の蛋白質との共存下よりも低摩擦を示した.原子間力顕微鏡による境界膜の観察から,DPPC添加によるアルブミン凝集体の小型化,および境界膜の平滑化が確認された.さらに,赤外分光光度計による境界膜の分析から,フィルム状境界膜にはDPPCが含まれていることが確認された. ヒアルロン酸(HA)0.5wt%とDPPC0.01wt%を添加した水溶液に種々の濃度で蛋白質を添加した場合,蛋白質未添加条件が最も低摩擦を示し,HA-DPPC複合体からなると推察される表面形状を有する境界膜が形成された.そこで,HA0.5wt%・DPPC0.01wt%添加溶液中で摩擦試験を行い,HA-DPPC複合境界膜を摩擦面に付与した後,生理食塩水に蛋白質を様々な濃度で添加した溶液を潤滑液として摩擦試験を行った.その結果,全ての条件でHA-DPPC複合境界膜末付与の条件よりも摩擦が低減した.
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