Research Abstract |
本年度は,昨年度までに明らかにされた子どもの抑うつの認知面・行動面・環境面でのリスクファクターに基づき,児童期の子どもを対象とした抑うつ予防プログラムの開発とその有効性の検討を実施した。 抑うつ予防プログラムは,1ヶ月に2回のペースで計9セッション実施し,1セッションあたりの時間は45分であった。ほぼすべてのセッションにわたり,大学スタッフが作成した指導案形式の介入マニュアルに基づいて学級の担任教師が介入を行った。プログラムの内容は,(1)心理教育,(2)社会的スキル訓練,(3)認知再構成法を中心的な構成要素としていた。各回のセッションの様子はビデオ録画され,介入マニュアルの内容が実際のセッション内でどの程度達成されていたか(treatment fidelity)を評価するための資料とした。 プログラムの有効性の検討は,一般の小学5〜6年生310名を対象として行われた。介入群150名には本研究で開発された抑うつ予防プログラムを実施し,対照群160名にはアセスメントのみを実施した。その結果,介入群の対象者では統制群よりも抑うつ症状が有意に大きく低減し,臨床的なレベルの抑うつ症状を示す対象者の割合にも有意な減少が認められた。また,介入の標的とされていた社会的スキルやネガティブな認知にも有意な改善が見られ,プログラムがこれらのリスクファクターに適切に働きかけるものであることを示していた。さらに,児童の主観的な学校不適応感にも改善が認められていた。ビデオ映像を用いたtreatment fidelityの検討の結果,各セッションの達成率は85〜100%の範囲であった。達成されていなかった点としては,セッションのまとめやホームワークの指示が時間の関係で省略されているものが数回見られたが,中核的な内容は確実に達成されていた。以上のことから,本研究で開発された抑うつ予防プログラムの有効性が支持された。
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