2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J09565
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
及川 真平 Kyoto Institute of Technology, 生物資源フィールド科学教育研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 葉寿命 / 葉の枯死タイミング / 老化 / 個葉・個体光合成 / 資源獲得・資源利用 / FACE / シンクーソース / 窒素 |
Research Abstract |
これまでの研究により、土壌中の窒素が光合成を律速する場合とそうでない場合とで、葉が枯れるタイミングとメカニズムが異なることを明らかにした。窒素が律速する場合、葉はまだ光合成できる能力を有したまま枯死したが、葉の枯死に伴う新葉への窒素の転流により個体の光合成は最大化された。一方、窒素が十分にある場合、葉は自身の光合成がゼロになったときに枯死し、個体の光合成を最大化しなかった。なぜ個体の光合成は最大化されなかったのか。窒素のシンク力が強くなければ、加齢した葉から窒素を転流することができず、個体の光合成を最大化する最適なタイミングで葉を枯らすことができない、という仮説をたてた。シンク力を変える操作として、高濃度の二酸化炭素(CO2)とオゾン(O3)の付加を行った。一般にCO2の付加は新葉の生産を促し、O3は葉の生産を抑制する。以下の仮説を検証した。(1)高CO2下ではシンク力が強く、窒素が十分にあっても葉は最適なタイミングで枯れる。(2)高O3下では、シンク力が小さく、葉は最適なタイミングよりも遅れて枯死する。材料は、根粒を形成し、窒素に律速されにくいダイズを用いた。野外開放型ガス付加装置でダイズを生育させた。発芽時から種子成熟期にかけて、ダイズを高濃度CO2とO3に暴露した。毎月、群落内の光環境と葉の光合成特性を測定した。群落光合成モデルを用いて、様々な齢の葉の炭素収支を推定した。群落内の光環境と葉の光合成特性の測定を行い、様々な齢の葉の1日あたりの炭素収支を推定した。いずれの処理区においても、枯死直前の葉の炭素収支はゼロあるいはマイナスの値を示した。また、処理間に有意な差は見られなかった。これは、「葉は生理的能力を有したまま枯れる」という最近の報告とも、「シンク力の違いによって葉の枯死時の炭素収支が異なる」という本研究の仮説とも異なる結果である。この結果は、葉の枯死タイミングの決定機構は当初考えていたよりも複雑であり、このような研究をさらに多くの植生タイプや種、環境条件下で行う必要があることを示している。
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Research Products
(1 results)