2007 Fiscal Year Annual Research Report
直接観測による深海乱流の定量化とその海洋大循環モデルへの組み込み
Project/Area Number |
07J09575
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横田 華奈子 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | エネルギー消散率 / 船直乱流拡散係数 / 深層海洋大循環 / 混合 |
Research Abstract |
今年度から、申請者の所属する研究室では、深度5500mまでエネルギー消散率の計測可能な深海乱流計VMP-5500を導入した。まず、4〜6月に北海道大学の練習船おしょろ丸の実習航海において、乱流の微弱な場所や流れの強い場所で超深海乱流計のテストを実施し、正常に動作することを確認した。 7月におしょろ丸北洋航海の航路上の9測点で観測を行った。この航海中に、我が国で初めて、深度5200mまでのエネルギー消散率の直接観測に成功した。観測点のうち8点は、M_2内部潮汐エネルギーの発生源であるアリューシャン海嶺の斜面を横切る2測線で行われた。 その結果、斜面から少し距離のある場所(測点番号4,5,9)では、海底に近づくにつれてエネルギー消散率が増大しており、その値は40-^4(m^2/s)オーダーにまで届いていた。そして、海底〜深度2500mにおいて最小二乗法でフィッティングし、エネルギー消散率のスケールハイトを求めると約600mであった。この値は、St. Laurent et al.(2001)による北大西洋のブラジル海盆における観測と同じオーダーである。 一方、斜面上(測点番号3,6,7,8)では、鉛直分布が明確でなかった。これは、海底からだけでなく、水平方向からもエネルギーが伝播してくるためと考えられる。また、測点3と6,7,8を比較すると、明らかに測点6,7,8において、乱流拡散係数が大きかった。この原因をさぐるため、数値実験で求めたM_2エネルギー密度分布と重ね合わせてみると、6,7,8はビームの真っただ中であり、エネルギー密度との関係性を調べると、エネルギー密度が増加するにつれ、鉛直乱流拡散係数も増加していることがわかった。このことから、斜面上におけるエネルギー密度と鉛直乱流拡散係数の関係性が示唆された。
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