2008 Fiscal Year Annual Research Report
直接観測による深海乱流の定量化とその海洋大循環モデルへの組み込み
Project/Area Number |
07J09575
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横田 華奈子 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | パラメタリゼーション / シアーとストレインの比 / 伊豆-小笠原海域 |
Research Abstract |
これまでに提案されたエネルギー消散率を見積もるパラメタリゼーションの式はファイン・スケールのシアーを用いたGregg(1989)(以下、G89)、ストレインを用いたWijesekera et al.(1993)(以下、W93)、そしてシアーとストレインの比(R_ω)を用いてエネルギースペクトルのGarrett-Munkモデルからの歪みの効果を取り入れたPolzin et al.(1995)およびGregg et al.(2003)(以下、GHP)などである。これらの有効性を調べるため、今年度は、VMP-5500による乱流直接観測だけでなく、投棄式流速計の観測も同時に実施した。観測は北海道大学水産学部附属練習船「おしょろ丸」の北洋航海および伊豆・小笠原航海において行った。 直接観測したエネルギー消散率とパラメタリゼーションから見積もった値とを比較すると、平均して、G89は4.8倍、W93は2.0倍の過大評価で、しかも、その分散が大きく、精度が低かった。一方、GHPの式は3.2倍の過大評価であったが、分散が小さく最も高精度なパラメタリゼーションの式と判断された。そこで、このGHPの式で重要な意味を持つR_ωに着目した。 緯度30度未満ではparametric subharmonic instabilityにより近慣性シアーが強まるため、R_ωは増大すると予想していたが、実際に観測してみると予想に反してR_ωさほど大きくなく、しかも顕著な海底地形に近づくほど小さくなるという傾向を示した。この観測結果は、慣性周波数だけでなく、より高周波数にもエネルギーが流れ込んでいることを意味している。 このメカニズムを調べるために行った数値実験の結果も観測から得られた結果と定性的に一致した。今後は、この実験結果をより詳細に解析し、エネルギーが高周波数側へ流入するメカニズムを解明していく必要がある。
|