2008 Fiscal Year Annual Research Report
天体衝突により発生する衝突蒸気雲内における触媒反応
Project/Area Number |
07J09622
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石橋 高 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 天体衝突 / 衝突脱ガス / 炭酸塩 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、炭酸塩(CaCO_3)からの二酸化炭素(CO_2)の衝突脱ガスの解明を目指し、研究を遂行した。従来考えられてきた衝突脱ガス機構は、衝撃波通過直後の段階では、まだCaCO_3は分解しておらず、希薄波の伝播による圧力の解放後に分解が起こり、脱ガスするというものであった。しかし、衝撃圧が十分に高ければ、衝撃波通過直後の段階で、すでに分解が起こると考えられる(Hugoniot上での分解)。そのような場合、従来考えられてきたよりも大規模な脱ガスが起こるはずである。CaCO_3のHugoniot上での分解が起こる衝撃圧を知るには、高温・高圧におけるCaCO_3の分解境界を知る必要がある。しかし、従来の研究ではCaCO_3の分解境界は〜1700K、数十barまでしか求められていなかった。そこで本研究では本年度、レーザー加熱式ダイヤモンドアンビル装置(LHDAC)を用いて、高温・高圧におけるCaCO_3の分解境界を求めた。第一段階として、LHDACにおける高温測定法の改良を行い、高温領域の温度測定を可能にした。第二段階として、ラマン分光法およびエネルギー分散型X線分光法を用いたCaCO_3分解の判別手法を確立した。第三段階として、広い温度・圧力領域におけるCaCO_3の分解境界を求めた(最大〜5000K、〜10GPa)。その結果、CaCO_3は高温・高圧領域において非常に安定で、分解しにくいことが判明した。この結果は、衝撃圧が高くなったとしても、CaCO_3からの大規模な衝突脱ガスは起こりにくいことを示唆している。6500万年前のK-P境界における生物大量絶滅機構の一つの仮説として、炭酸塩から脱ガスしたCO_2による温室効果が提唱されているが、本研究の結果は、CO_2による温室効果は非常に小さく、生物大量絶滅機構とはなり得ないことを示している。
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Research Products
(1 results)