2007 Fiscal Year Annual Research Report
酵母プリオン系を用いたプリオン伝播の分子機構の解明
Project/Area Number |
07J09670
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大橋 祐美子 The Institute of Physical and Chemical Research, 田中研究ユニット, 特別研究員(PD)
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Keywords | アミロイド / オリゴマー / 酵母プリオン / Sup35p / X線小角散乱 |
Research Abstract |
酵母プリオンSup35pは、温度の違いにより異なる構造を持つアミロイドを形成し、それらアミロイドは酵母に異なる表現型をもたらすことが知られている。この現象の機構解明のため、Sup35pのアミロイド形成前駆体について調べた。 X線小角散乱及び分析用超遠心の測定から、アミロイド前駆状態ではモノマーとオリゴマーが平衡状態で存在し、低温ほどオリゴマーの比率が増すことを発見した。また、酵母に感染させたときの表現型はオリゴマー量と密接に関係しており、一定以上のオリゴマー存在下で形成されたアミロイドは、共通の表現型を示した。以前より、Sup35pのオリゴマーの存在の有無については議論の的であったが、そこに明白な答えをもたらす結果を得ることが出来た。 次に、1アミノ酸置換Sup35pのオリゴマー量をX線小角散乱で測定することで、オリゴマー形成に重要な残基の特定を行った。結果、それはN末端から100残基程度の広範囲に分布しており、特にチロシン残基が重要であることが分かった。Sup35pのアミロイドではN末から40残基が重要であるという報告があり、その事からオリゴマーがアミロイドとは大きく異なる構造を持つことが分かる。さらに円二色性測定からはオリゴマーはモノマーの構造に近いことが示された。しかし、アミロイド特異的に結合する蛍光色素チオフラビンTと弱いながら結合することから、オリゴマーの一部にアミロイド様構造が含まれていると考えられる。 さらに、Sup35pのオリゴマー形成を阻害もしくは促進する薬剤も発見しており、オリゴマーの有無による酵母の表現型の変化がより一般的に成立するということも分かった。また、この薬剤添加実験から、アミロイド構造と表現型に興味深い変化をもたらす薬剤も見つかっており、今後、より詳細なアミロイド形成機構解明へのアプローチの手助けとなると確信している。
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