2007 Fiscal Year Annual Research Report
極低温および強磁場下におけるカロリメトリーを用いた機能性材料の物性研究
Project/Area Number |
07J09728
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小浜 芳允 Tokyo Institute of Technology, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超伝導 / 熱容量 / 電気抵抗 / セメント / BCS理論 / クラスレート化合物 / エレクトライド |
Research Abstract |
アルミナセメントの一種である12CaO-7Al_2O_3(Cl2A7)は、籠状の構造を有す非常に安価な材料である。この化合物は籠構造の中にドープするイオンにより、様々な機能性を示す材料として多大な注目を浴びている。 私は、Cl2A7に電子をドープした12CaO-7Al_2O_3:e^-(Cl2A7:e^-)という化合物の電気抵抗および熱容量測定を、0.1Kから300Kに渡る広い温度範囲で行った。その結果、Cl2A7:e^-は0.4K以下という極低温領域で超伝導を示すことを、電気抵抗および熱容量測定から見出した。これは世界で初めての超伝導を示すセメントの発見である。このような、超伝導を示すほどの高い電気伝導度を示す材料は、高い熱伝導度も示すため、高い熱伝導度を持つセメントとして有用であることが示唆される。 さらに私は、幾つかのドープ量を有するサンプルについて測定を行い、超伝導転移温度がドープ量に依存することを見出した。熱容量の詳細な解析からは、このセメント超伝導体がフォノンを介在したBCS超伝導体であることを明らかにしており、BCS理論の枠組みの中で超伝導転移温度のドープ量依存性も説明している。電子濃度の上昇に伴う転移温度のさらなる上昇も予想できており、材料設計の指針を打ち出したといえよう。最終的に、この化合物における超伝導の発現は、その硬い籠構造と籠状の構造に起因すると結論付け、同様の構造を有する無機化合物において、超伝導の発現を予想している。
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