2008 Fiscal Year Annual Research Report
多成分原子気体ボース・アインシュタイン凝縮体で実現する多様な位相欠陥の研究
Project/Area Number |
07J09748
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
竹内 宏光 Osaka City University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超流動 / ボース・アインシュタイン凝縮 / 量子渦 / ケルビン波 / ブージャム / ブラックホール |
Research Abstract |
ケルビン波のランダウ不安定性の研究に関して、超流動の不安定性に関する議論は、これまで並進運動もしくは回転運動する環境体下でしか行われなかった。本研究では、並進運動と回転運動か合わさった螺旋運動する環境体に対する、新しい型の超流動の不安定性を初めて微視的な視点から提案した。特に、量子渦が存在するときには、ケルビン波と呼ばれる渦の螺旋モードがランダウ不安定性によって自発的に励起、増幅されることを示し、超流動ヘリウムで知られるDonnelly-Glaberson不安定性の微視的解釈を与えた。18年度に発表した学術論文(Hiromitsu Takeuchi,Kenichi Kasamatsu,and Makoto Tsubota'Spontaneous radiation and amplification of Kelvin waves on quantized vortices in Bose-Einstein condensates'Phys.Rev.A 79,033619(2009))では、この現象を利用して、BECにおけるケルビン波の分散関係、量子渦の再結合、量子乱流の観測可能性について議論した。微視的な視点から見たDG不安定性は、原子気体BECにおいてケルビン波を巧みに操作することが可能であることを示している。今後のこの研究の展開としては、DG不安定性を利用してケルビン波を操作することにより、ケルビン波のカスケードの研究や、量子乱流の研究などが期待される。また、超流動ヘリウムの量子渦、超伝導体の磁束、宇宙紐などの同様な秩序変数で記述される系の位相欠陥での類似現象の探求も興味深く、積極的に他分野への応用研究をする予定である。原子気体ボース・アインシュタイン凝縮におけるブージャムの研究に関して、我々は原子気体BECにおけるブージャムを初めて提案した。現在、このブージャムを位相幾何的に解釈する研究を遂行中である。また、以前提案したブージャム以外にも、異なる種類のブージャムが可能であり、それらの中には、素粒子論で議論されているDブレーンと関連付けることができるものが存在することがわかった。これは、原子気体BECでDブレーンを模擬実験する可能性を与えるものであり、たいへん興味深い。原子気体ボース・アインシュタイン凝縮における回転するブラックホールの研究に関して、研究会「際本研究会渦・流れ,ホーキング輻射」で口頭発表を行い、宇宙論の専門家と活発な議論を行った。
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Research Products
(8 results)