2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J09808
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 守人 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | Erigone atra / 移動 / 分散 / 島嶼生態学 |
Research Abstract |
ダーゥインが提唱した「島嶼環境では周囲が水域であるため分散のコストが大きくなり、陸上生物が移動能力を失う」という仮説の検証を、英国のアッテンボロー国立公園(ANR)において、クモの群集を用い行なった。このユニークな仮説は島嶼における生物進化の起源に関わる重要なアイデアでありかつ十分な論理性を有しているにも関わらず羽の多型等、形態的特長に注目した研究では仮説が棄却されてきた。そこで本研究では、移動に関わる個体ごとの行動に着目してこの仮説の検証を試みた。ANRではほぼ20年おきに新しい人口島群が湖上に形成されているため、行動のように進化が速いとされる形質について詳細なモニタリングが可能である。数ヶ月の予備実験を行なった後、様々な環境におけるクモの行動を60パターン定義した。続いて、公園内でクモ約800個体を採集し実験室において詳細な行動実験を行った。その結果、特に移動能力に関しては、古い島の群集ほど耐風能力が大きくなることが明らかになった。この耐風能力には、突風に対して吹き飛ばされないように姿勢を低くする反応や、岸から水上に落下した際水面にすばやく糸を放出して沖へ流されないようにするアンカーリングといった未報告の行動が含まれている。これらの行動は恐らく個体が島に留まる上で重要な役割を担っており、わずか数ミリの小さなクモが風によって島から湖上に投げ出される、もしくは水面に投げ出された後風に流されないように行動する個体が古い島に残る、という今回の結果は冒頭のダーゥインの仮説を強く支持するものである。また、形態の進化が起こるよりも遥か前に行動による移動能力の消失が起こっていることも併せて明らかになった。これらの結果は米国の国際誌に再度投稿中である。
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Research Products
(2 results)