2008 Fiscal Year Annual Research Report
海綿由来多剤耐性克服物質ISAsの活性発現メカニズムの解析
Project/Area Number |
07J09814
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
江村 智佐登 Kyushu University, 大学院・薬学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 多剤耐性 / 海綿 / Ircinia sp. / 脂肪酸 |
Research Abstract |
多剤耐性克服物質として、福岡近海にて採集された海綿Ircinia sp.より発見されたIrciniasulfonic acids(ISAs)およびISAs-Bについて、活性発現メカニズムの解析を行なうために、それぞれ誘導体の化学合成を行なっている。前年度の研究では、ISAsより長鎖脂肪酸を除去した構造のdeacyl体には活性がなく、deacyl体の水酸基に長鎖脂肪酸(C14,C18)をエステル化させたISA誘導体に活性が確認された。本年度では、天然体のISA,ISA-Bを作製するために、構成脂肪酸のひとつである(15Z)-docosenoic acidの合成を行なった。15-Hydroxypentadecanoic acidをメチル化し、swern酸化にて1級アルコールをアルデヒドへと変換した。その後、アルデヒドを1-heptylphosphonium bromideとのwittig反応によりオレフィン化し、アルカリ加水分解で脱メチル化を経て、目的とする脂肪酸(15Z)-docosenoic acidを合成した。 C14,C18の長鎖脂肪酸をもつISA誘導体のKB/VJ300細胞に対するビンクリスチン耐性克服活性試験を行なった際、細胞を顕微鏡で観察したところ、試験化合物(+)/ビンクリスチン(-)の細胞では、濃度依存的に形態変化が見られた。側鎖脂肪酸の長さによって活性が強くなること、活性発現には比較的濃い濃度が必要であること、細胞に形態変化が見られることから、ISAsの耐性克服活性は、ISAsがP-糖タンパク質の基質となりビンクリスチンの排出を競合的に阻害したり、P-糖タンパク質に直接作用しているのではなく、ISAsが細胞膜に入り込むなど、細胞膜に何らかの影響を与えた結果、P-糖タンパク質の働きが抑制されているのではないかと推測される。
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