2007 Fiscal Year Annual Research Report
慢性痛における可塑的神経回路の可視化と病態責任分子同定を通じた新しい治療戦略
Project/Area Number |
07J09874
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松本 みさき Nagasaki University, 長崎大学大学院・医歯薬学総合研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 神経因性疼痛 / アロディニア / NMDA受容体 / リン酸化 / ERK1 / 2 / ニューロメーター |
Research Abstract |
神経因性疼痛は、その特徴的症状としてアロディニア現象(触刺激が激しい痛みとして受容される知覚異常)を呈する。このことについて、可塑的神経回路の変調が生じていることが推定されることから、活性化される神経細胞を組織化学的に可視化し、病態時における変化を比較検討した。解析には、無髄C線維、有髄Aδ線維、有髄Aβ線維を選択的に刺激できるニューロメーター電気刺激装置を使用し、刺激直後に活性化される神経細胞をリン酸化ERK 1/2(Extracellular signal-regulated kinase 1/2)蛋白質を指標として同定した。無髄C線維刺激は小型DRG(dorsal root ganglion)細胞を活性化させ、脊髄I-II層領域の脊髄細胞を活性化させた。有髄Aδ線維刺激は中型/大型DRG細胞および、脊髄I層領域の神経細胞を活性化させた。また、有髄Aβ線維刺激は、中型/大型DRG細胞を活性化させるが脊髄神経細胞においてはERK1/2リン酸化を誘導しなかった。さらに、活性化されるこれらの脊髄神経細胞について脊髄伝達物質拮抗薬感受性を解析することにより、無髄C線維はSubstance P(NK1)受容体とNMDA受容体を介して脊髄入力し、有髄Aδ線維はNMDA受容体を介して脊髄入力することが明らかになった。一方、坐骨神経部分結紮性神経因性疼痛モデルマウスでは、有髄Aβ線維刺激によって、脊髄I-II層領域の脊髄細胞においてERK1/2リン酸化が認められ、このリン酸化応答はNMDA受容体拮抗薬によって遮断された。このように、神経因性疼痛時の有髄Aβ線維応答は、正常時に認められる侵害性の無髄C線維や有髄Aδ線維応答に酷似する性質を示したことから、有髄Aβ線維を介する非侵害性刺激が侵害性受容に誤入力するという事実が明らかとなった。この現象は、アロディニア現象の作用機序であると考えられる。現在、この研究成果について投稿準備中である。
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Research Products
(7 results)