2008 Fiscal Year Annual Research Report
慢性痛における可塑的神経回路の可視化と病態責任分子同定を通じた新しい治療戦略
Project/Area Number |
07J09874
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松本 みさき Nagasaki University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 神経因性疼痛 / アロディニア / 痛み |
Research Abstract |
神経因性疼痛は、その特徴的症状としてアロディニア現象(触刺激が激しい痛みとして受容される知覚異常)を呈する。この作用機序について、損傷した神経間で何らかの機能的クロストークが生じ、有髄Aβ線維を介する非侵害性刺激が侵害性受容域に誤入力することを提唱した(前年度研究報告)。末梢知覚神経はシュワン細胞の形成する髄鞘(ミエリン)によって覆われており、これらが絶縁体となって選択的な知覚神経活動を維持している。一方、神経傷害時、LPA_1受容体を介して脊髄後根部位に脱髄が生じることが報告されており、神経間のクロストークに関与することが示唆されている。このことから、本年度は、神経間クロストークにおけるLPA_1受容体の関与を評価した。神経傷害を施した野生型マウスでは、著明なアロディニア現象が観察されたとともに、有髄Aβ線維(非侵害性)刺激により、侵害受容域である脊髄I-II層領域においてリン酸化ERK 1/2(Extracellular signal-regulated kinase 1/2)蛋白質陽性細胞が観察された。一方、神経傷害を施したLPA_1受容体遺伝子欠損マウスでは、アロディニア現象は完全に抑制され、また、有髄Aβ線維刺激による脊髄神経活性化も有意に抑制された。以上の結果から、損傷した神経間の機能的クロストークにおいて、LPA_1受容体分子が関与することが明らかとなった。 さらに、小麦胚芽レクチンWGAを利用したシステムを用いて神経回路網を可視化することのできるレンチウイルスベクターを開発した。この新規ベクターにより、神経因性疼痛モデルにおける可塑的神経回路変調の解析が可能である。さらに、可視化を通じて、病態に関与する神経細胞・分子の解析に発展できると期待される。
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Research Products
(5 results)