2007 Fiscal Year Annual Research Report
欧米諸国へ侵入した日本産イタドリの生物的防除に関する研究
Project/Area Number |
07J09902
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
黒瀬 大介 Kyushu University, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イタドリ / さび病菌 / 斑点病菌 / 内生菌 / 生物的防除法 |
Research Abstract |
約100年ほど前にシーボルトにより西欧に持ち込まれた雌一株の日本原産イタドリは現在,欧米諸国において大繁殖し,被害が拡大している難防除性の雑草となっている.本研究ではこの外来性侵入雑草であるイタドリを日本産の本雑草に寄生する植物病原性糸状菌を用いて生物的に防除する途を拓こうとするものである.これまでの研究成果から,二種のさび病菌と一種の斑点病菌がイタドリに特異的に高い病原性を示し,本雑草の生物的防除素材としての有効性を明らかにしている.中でも斑点病菌は宿主範囲試験を含めた安全性評価の点から,実用化が求められている有望菌である.しかし,これまで本有望菌の詳細な分類学的記載が明確でないことから,生活環並びに各世代の胞子形成の有無とそれらの形態学的検討を行うと同時に,分子生物学的情報を新たに加え,多くの新知見が得られたことから,現在これらの結果を取り纏め論文作成を進めている.一方,日本産イタドリ健全葉から病原菌でないと推定される多種多様な糸状菌(内生菌)が生息していることを明らかにしている.そこで今回,英国産イタドリ健全葉にも内生菌が生息しているか否かについて,内生菌とイタドリとの共進化の関係を知る目的で,日本と英国の多数のイタドリ群落を選定し健全葉から糸状菌の分離を試みた.その結果,英国産イタドリ健全葉には全く内生菌が生息していない群落の存在が明らかとなると同時に,内生菌の種構成も日本産群落が複雑であり,英国産イタドリと糸状菌との約100年における共進化の過程が本研究成果から示すことが可能となりつつある.さらにこれら内生菌種の中には斑点病の進展を顕著に助長するものの存在が摂取試験の結果から示され,内生菌と病原菌とを併用した世界でも類も見ない斬新な伝統的生物防除法開発が進行している.
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