2008 Fiscal Year Annual Research Report
地殻深度5-20kmにかかった古応力絶対値とその時間変化
Project/Area Number |
07J09928
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
木村 希生 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 地質情報研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | 地殻応力 / 疲労破壊 / ストライエーション / 単結晶鉱物 / ガラス |
Research Abstract |
地球表層(地殻)の変形挙動の定量化を目的に、地殻内でも特に高応力が生じると予想されている脆性-塑性遷移帯(大陸地殻で10〜20km深度に相当)の現実的な地殻強度を見積もる研究を行った。脆性-塑性遷移帯相当深度の地殻強度は、定常状態下での岩石変形実験では100〜500MPa程度の値が見積もられている。一方、プレート境界型地震(深度20〜30km)に伴う応力降下量やプレート沈み込み境界のせん断応力は1-40MPa程度と、実験から見積もられた値と桁で異なっている。この両者の大きなギャップの原因について、真っ向から取り組んだ研究例は報告者の知る限り無い。そこで報告者は、天然単結晶鉱物を用いた実験と天然で形成された組織の観察を組み合わせて、上記とは別の切り口で深度10-30km相当の地殻応力(ただし古応力)を推定した。その結果、鉱物の【疲労破壊】に着目すると、脆性-塑性遷移帯の地殻強度は1-30MPa程度の差応力で変形し得ることがわかってきた。 具体的な研究成果は、(1)天然の単結晶鉱物(電気石)を用いて静的疲労試験を行い、その結果、顕著なへき開割れを生じない単結晶鉱物はガラス物質の破壊挙動と酷似していること、(2)天然の鉱物破面をSEM観察した結果、繰り返し疲労下で形成されるストライエーション模様とそっくりな組織が観察されたことである。このストライエーション模様は、天然の脆性破壊は通常の実験で求めるような即時的な破壊ではなく、降伏強度以下の応力下でゆっくりき裂が進展し、やがて破壊に至るというひとつの証拠になる。
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Research Products
(3 results)