2008 Fiscal Year Annual Research Report
単一電子スピンの量子コヒーレンス・もつれの外部環境依存性とその破れに関する研究
Project/Area Number |
07J10043
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日達 研一 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 量子ドット / 電子スピン / デコヒーレンス / 量子ポイントコンタクト / 近藤効果 / スピンの読み出し / 電子温度の上昇 |
Research Abstract |
本研究は、量子ドットの電子スピン状態の操作、デコヒーレンスに関心がある。 スピン操作に関連して、平成19年度は、量子ドット中の単一の電子スピン状態を検出する新たな方法を提案した。この検出には、二重量子ドット中のパウリスピンブロッケード状態が用いられていたが、実験的な難しさがあった。この問題を解決するために、我々は単一の量子ドットのリード側でエッジ状態ができているときに、電子スピン状態が検出できることを提案した。リードにエッジ状態ができると、スピンの向きによりドット・リード間のトンネル結合が異なる。実験では、量子ドット内のスピン上向きと下向きの二準位が入っているときには、スピン上向きの準位が入っているときに比べて電流が抑制することが分かった。さらに数値計算により、電子スピンが回転すると、電流の抑制が解除されることが示された。この結果は、単一量子ドットでの電子スピン操作を十分期待できるものである。 平成20年度は、量子ドットと量子ポイントコンタクト(電荷計)が静電的に結合したデバイスを作成し、デコヒーレンスについて調べた。電荷計が量子ドットに影響を与える要因として、(1)ドットの量子状態の観測により、ドットの電子状態が壊れることや、(2)電荷計の電圧降下が量子ドットの電気伝導に影響を及ぼすことが考えられる。実験の結果、ドット・リード間のトンネル結合が小さい領域では、クーロンブロッケード内に余剰電流と電子温度の上昇が観測された。同様の電子温度上昇はトンネル結合が大きい領域でも観測された。同時にトンネル結合の大きい場合に近藤効果が観測されたが、実験から近藤効果のコンダクタンスの減少が電子温度の上昇程度で十分説明できることがわかった。以上の結果は、量子ドットの電荷計によるコヒーレンスの破れが、(2)に大きく起因していることを示していて、これは量子ドットが外部環境と弱く結合している結果であると考えられる。
|
Research Products
(4 results)