2008 Fiscal Year Annual Research Report
現代エジプトにおけるムスリム女性のヴェールとイスラームの教義・思想に関する研究
Project/Area Number |
07J10102
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 絵美 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | イスラーム / 宗教 / 女性 / エジプト / ヴェール / 20世紀 / 知識人 / 信仰 |
Research Abstract |
現代エジプトではとくに1970年代以降、新たにヴェールをまとうムスリム女性の数が急増している。本研究はこの現象の背景や理由を考察するものである。 こうした動きは先行研究において、もっぱら世俗的(政治的、社会的、経済的)理由によって説明されてきた。しかし、多くの女性が自らの行為を「ムスリムだからヴェールをまとった」「神のためにまとった」などと説明していることから、報告者は、イスラームあるいは宗教的な枠組みによる考察も必要であると考えた。そこで報告者はこれまで、主に宗教パンフレットや説教などを通して男性知識人が発信してきた「ヴェールに関する宗教言説」を分析し、ヴェール着用の背後にある論理や思想を明らかにしようと試みてきた。これに対し、本研究は、女性たち自身の声を分析の対象にするものである。 本年度はまず、昨年度の研究成果として、五月の日本中東学会年次大会において、新たにヴェールをまとい始めた最初の世代に属し、先駆的な女性イスラーム主義者として知られるザイナブ・アル=ガザーリー(1917-2005)の事例を扱った。具体的には、アル=ガザーリーがヴェールをまとった経緯や、ヴェールに関する彼女の知識や思想について、時代背景や当時の議論の展開を考慮しつつ分析した。 その後、アル=ガザーリーがヒジャーブを着用し始めた1930年代から現代までの女性たちの服装の変化と社会におけるヒジャーブの位置づけを探ることを目指した。この時期における変化は先行研究においてほとんど言及されていない。そこで、21年1月24日-2月25日の日程で、エジプト・カイロを訪れ、同国立図書館を中心に、同時期にエジプト国内で出版された代表的な女性雑誌の一部を参照、その中におけるヴェール論の展開と女性たちの服装(ヴェール着用状況)の変化を辿るという作業を行なった。
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