2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J10116
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩崎 慎平 Kyoto University, 地球環境学堂, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 地域開発 / 人間の安全保障 / 持続的生計アプローチ / 資源紛争 / 資源配分メカニズム / チリカ湖 / ソンクラ湖 / サロマ湖 |
Research Abstract |
本研究は、(1)湖沼で生計を立てている零細漁民を対象に、(2)人々の生活条件を規定する「資源」に着目し、(3)当該地域の人々が貧困から脱却する可能性を阻害する要因・脱却に向けて人々が持つ強みを抽出し、(4)自立的発展に向けた地域開発のあり方を考察することを主眼とする。 平成十九年度は、三つの汽水湖(インド・チリカ湖、タイ・ソンクラ湖、日本・サロマ湖)にて社会水産調査を実施し、(1)現在及び過去の両面から関係者間で漁業資源をめぐる資源配分メカニズム(資源利用及び流通市場)が如何に形成され、(2)当該地域で暮らす人々の生計にどのような影響を及ぼしているかを検討した。 ソンクラ湖及びサロマ湖については、(研究計画どおり)次年度から本格的に調査活動を進めるため、現地関係者との協力体制作り及び基礎情報の収集に努めた。 他方チリカ湖については、三つの課題に取り組んだ。一つ目は、漁場利用をめぐる「漁民・非漁民カースト間の争い」の関係から漁業社会構造の実態に迫り、チリカ湖の漁業政策の変遷を紐解きながら、資源紛争が起きた成立過程を明らかにした。二つ目は、漁業資源配分をめぐる「漁民と仲買人」の関係から漁業経済構造の実態に迫り、仲買人から搾取を受ける漁民の経済・社会的な特徴を明らかにし、漁協が機能している地域とそうでない地域に着目し、漁協主導による資源管理型漁業の潜在的有用性を検討した。そして、一、二で得られた結果を踏まえ、気候変動がチリカ湖周辺の漁村に与える影響と人々の適応戦略について分析し、チリカ湖における地域ガバナンスに関する制度設計の論点を整理している。これらの調査研究は、地域開発の視点から持続可能な社会を構想する上で欠かせない作業である。当該地域が直面するニーズの「不足」を生み出す社会構造を問い直すことで、途上国で進められている地域開発にメスを入れ、地域の自立的発展に向けたあるべき地域開発の像を提案できるだろう。
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