2008 Fiscal Year Annual Research Report
眷村文学における「故郷」概念の変容と自己認識-朱天心とリカラッ・アウーの叙述戦略-
Project/Area Number |
07J10123
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
倉本 知明 Ritsumeikan University, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 台湾 / 老兵文学 / 眷村文学 / 朱天心 / 張大春 |
Research Abstract |
昨年度は、一昨年前の研究成果を踏まえ、朱天心の代表的な眷村文学作品である『ハンガリー水』(1995)を取り上げ、6月初旬に東京大学において開かれた第10回日本台湾学会において口頭発表を行った。それを基に、同学会第11回学会報に「身体的記憶が喚起する廃墟の記憶-朱天心『ハンガリー水』における眷村表象を中心に-」と改題し、投稿した。また、しばしば眷村文学との同質性が指摘される老兵文学に関して、立命館大学において9月中旬に行われたモダニズム研究会で「離散文学としての老兵文学-台湾におけるその発展と展開-」として口頭発表を行い、それを立命館大学先端総合学術研究科紀要論文誌『Core Ethics』(Vol.5)に「老兵文学における家族表象-履疆と張大春の比較を中心に-」として投稿した。ここでは主に老兵文学の歴史的な発生過程を捉え、その上で、履疆と張大春という二人の背景の異なった作家の描く老兵を家族表象という視点から考察した。 当初の研究目的にあったように、老兵の離散性とその文学作品における表象に関しては、十分な結果が出せたと思うが、一方で老兵と婚姻関係を結んだ山地原住民女性に関する考察は十分ではなかったように思える。本年度は特別研究員としての最終年度にあたることもあり、当初の研究計画にあったリカラッ・アウーに関して、こうした山地原住民女性のディアスポラ性といった角度からも研究を進める予定である。リカラッ・アウーに関しては、いくつかの先行研究を参考にしながら、ジェンダーアイデンティティの側面からその作品群を考察したいと考えている。
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Research Products
(5 results)