2008 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム進化動態における重複遺伝子の役割の解明:配列情報解析と実験によるアプローチ
Project/Area Number |
07J10124
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鶴 剛史 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ゲノム進化 / ゲノム比較 / 遺伝子重複 / 遺伝子水平伝播 / DNAメチル化 / 制限修飾系 / 利己的遺伝子 |
Research Abstract |
1、ゲノム比較による重複遺伝子の新しい再編進化様式の解明 黄色ブドウ球菌の複数の株間で著しい多型の見られる1plタンデムパラログ遺伝子群について詳細なゲノム比較を行い、各パラログ遺伝子の中央に存在する塩基配列レベルで非常に保存された領域での組換え・交叉によってこの多様性が生じていく過程を再構築した。この多様化の過程で、ある遺伝子の3'側領域・遺伝子間領域・下流の遺伝子の5'側領域という、隣接する二つのORFをまたいだ単位が保存されることを発見した。このような遺伝子(ORF)を単位としない多様化は、これまでの遺伝子を単位とした分子進化研究にない新たな多様性生成のメカニズムである。この細菌の別のタンデムパラログ遺伝子群でも同様の多様化が見られることを発見し、このメカニズムが普遍的である可能性が示唆された。 2、修飾遺伝子間のメチル化サイト競合による制限修飾遺伝子の水平伝達の阻害 2つの制限修飾系の認識配列が重複した場合、競合するサイトにおいて一方のメチル化か他方のメチル化を阻害するが制限酵素によるDNA切断は阻害しないという場合が存在する。このような相互作用がin vivoでどのような効果を持つのかを、上記のような関係にあるHpaII(またはSsoII)制限修飾系の修飾酵素遺伝子とBamHI制限修飾遺伝子の3者を発現誘導により共存させる大腸菌を構築して調べた。定量的形質転換実験と液体培養中での生菌数カウント実験により、3者を共存させると細胞死が引き起こされることを見出した。この時、染色体DNAの分解も観察された。メチル化酵素間のサイトの取り合いにより制限酵素感受性配列が生じ、そこを制限酵素が切断して細胞死を引き起こしていることが示唆された。このような機構による細胞死は、DNAメチル化遺伝子を含む外来遺伝因子の伝達の可否を制御する新規の機構であると考えられた。
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Research Products
(10 results)