Research Abstract |
申請者は,合成例ならびに実用的な性能を示す化合物が少ないn型有機半導体の開発を目的として,ベンゾシロール誘導体に着目し,その新規高効率合成法を昨年度報告した.すなわち,(2-アルキニルフェニル)シランにトリメチルスタンニルリチウムを作用させると,3-スタンニルベンゾシロールが定量的に得られ,この中間体の官能基化により3位に様々な置換基を有するベンゾシロール誘導体が合成可能になった.これを踏まえて当該年度は,2位の修飾を目的とした,置換ベンゾシロールの一般的な合成法の開発を目指した研究を行った.その結果,(2-アルキニルフェニル)シランに等量もしくは触媒量の水素化カリウムを作用させることで,2-置換ベンゾシロールが良好な収率で得られることを見いだした.本反応では,ケイ素上の置換基が収率に大きな影響を与えた.すなわち,ケイ素上の置換基がメチル基よりもフェニル基の方が収率が20-30%程度高かった.本反応は広い基質適用範囲を示し,2-アリール,ヘテロアリール,アルキル,およびシリル置換ベンゾシロールなどが高収率で合成可能になった.この反応は次のような段階を経て進行すると考えられる.(1)KHによるケイ素上の脱プロトン,(2)生成したシリルアニオンのアルキン部位への分子内攻撃による環化,(3)生成した3-ポタシオベンゾシロールによる未反応基質の脱プロトン.これにより目的物が生成するとともにシリルアニオンが再生するため,KHは触媒量でも反応が進行するものと考えられる.また,合成した2-置換ベンゾシロールの更なる官能基化も試みた.その結果,2-インドリルベンゾシロールおよび2,3-二置換ベンゾシロールなどを得ることができた.これらの化合物の物性測定を行ったところ,サイクリックボルタンメトリーで還元波を示し,n型有機半導体としての可能性を示唆する結果を得た.
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