2008 Fiscal Year Annual Research Report
報酬に基づく行動学習の計算論的モデルの確立と脳内メカニズムの解明
Project/Area Number |
07J10184
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川脇 沙織 (田中 沙織) Osaka University, 社会経済研究所, 特任准教授
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Keywords | fMRI / 報酬 / セロトニン / 強化学習 / 大脳基底核 / ニューロエコノミクス |
Research Abstract |
皮質-大脳基底核ループにおいて強化学習に基づいた行動学習・行動選択が行われており,脳幹から脳の各部に投射するドーパミンやセロトニンなどの「神経修飾物質系」がメタパラメタを調節する機能を担うという「メタ学習仮説」に基づき,ヒトを対象とする脳機能計測を用い,行動学習に関わる脳内メカニズム解明をおこなった.セロトニン操作下における報酬予測課題時の行動データ解析により,セロトニンレベルが低下していると,人は即時的な報酬予測を行うことを明らかにした論文を,神経科学の分野で代表的な査読付論文誌であるJournal of Neuroscienceに発表した(学会誌への発表2).また,カリフォルニア工科大学のJohn O'Doherty博士の下で,3テスラの機能的磁気共鳴画像法(fMRI)装置を用いた実験のデータ解析を行い,報酬を得るための行動がどのように生成されるかという,より汎用的な学習の脳内機構を調べたもので,被験者が環境から得られる報酬と自分の行動の間に因果関係があると感じた度合いによって,内側前頭前野が強く活動するという結果が得られた,この実験結果も,立て続けにJournal of Neuroscienceに発表した(学会誌への発表(1)).また,報酬予測と学習(記憶)の時間スケールの類似点から,時間遅れのある報酬に基づく過去の行動の学習メカニズムを調べるためのfMRI実験を14人の被験者に対して行い,現在データ解析中である.このように,本年度は,脳の中で実装されていると考えられる,柔軟な学習機構を明らかにするためにさまざまな学習システムを仮定し,それらにかかわる脳内機構をfMRI実験で明らかにすることができた.
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Research Products
(9 results)