2007 Fiscal Year Annual Research Report
消化管抑制性T細胞の分化制御機構の解明と炎症性腸疾患治療への応用
Project/Area Number |
07J10191
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
知念 孝敏 Kyushu University, 生体防御医学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | TGFβ / Foxp3 / 消化管 / 経口免疫寛容 / レチノイン酸 / 抑制性T細胞 / IL-10 / 抗炎症 |
Research Abstract |
消化管においては食物抗原や腸内細菌由来抗原を含む種々の外来抗原に対する免疫寛容が成立しているため、消化管に存在する抗原提示細胞はnaive T細胞を抑制性T細胞に分化させやすい、寛容誘導型の性質を有している可能性が以前から指摘されてきた。近年この考えを支持する論文が複数報告されている。特に消化管に存在するCDllc陰性の抗原提示細胞やレチノイン酸産生樹状細胞はTh17よりもiTregを誘導しやすいとされる。一方、T細胞欠損マウス(RAG欠損マウス)にnaive T細胞を移入すると大腸炎が発症する。この事実は、消化管に存在する抗原提示細胞が全身の他所の抗原提示細胞に比べより'寛容誘導型'である、とする前述した考えに矛盾する。この移入実験が示唆する事は、消化管における寛容状態の維持には制御性T細胞(Treg)が不可欠であるという事実であり、Treg非存在下においては消化管の抗原提示細胞は基本的にimmunogenic(免疫原性)である、という事にほかならない。我々は、「Tregの存在下においてのみ、消化管の抗原提示細胞は寛容誘導型の性質を発揮する」と考えればこの矛盾が説明できると考え、Treg存在下での樹状細胞の性質変化、特に、Tregによる樹状細胞の修飾(教育)が存在するか、に照準をあて解析を行う事とした。現在までの結果では、この予測を支持する結果が得られている。すなわち、Treg存在下では、これによって産生される豊富なIL-10により抗原提示細胞はTLR刺激に低応答性となっており、iTreg誘導に有利な状況となっている。またTregによって教育された樹状細胞ではわずかではあるがTGF-b産生能が亢進している、しかし一方でTregによって教育された樹状細胞ではTLR感受性が亢進し、TLR刺激によりIL-12p70やTNFaを高産生し、一旦Tregと接触すると樹状細胞は炎症性になるという矛盾した結果が得られている。つまり、当初の予測ではTregによる樹状細胞の教育が寛容の本態があると考えていたが、寛容の維持にはTreg-T cell間の直接の働きが本来重要であり、樹状細胞はTregのみと接触するとむしろ免疫応答を賦活化する、すなわち寛容を解除する作用が有するという仮説が考えられる。今後さらに解析をすすめ結論を得たい。
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Research Products
(3 results)