2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J10430
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
今津 義光 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | スピン / 核子構造 / 摂動論的量子色力学 / 破砕関数 / 縦偏極パートン分布関数 / 国際情報交換 / ドイツ |
Research Abstract |
素粒子加速器実験であるHERMES実験において、摂動論的量子色力学(pertrubative QCD,pQCD)に基づいた数値計算フレームワークを自ら構築し、実験データからの縦偏極パートン分布関数の抽出を通して、核子の内部スピン構造の研究を行っている。本年度は主に、以下の2点について集中的に取り組んだ。 1.破砕関数についての研究 既存の数値計算フレームワークを応用し、電子-陽電子対消滅によるハドロン生成過程(e^++e^-→h+X)のワールドデータから破砕関数の抽出、それの持つ統計誤差の見積もりを行った。破砕関数は、それ自身が興味深い対象であるのみならず、スピン構造の詳細な解析に必要となる複雑な散乱過程を記述するための重要な要素となっている。今回得られた破砕関数は、世界の他の解析グループが同時期に得た結果に匹敵するものであり、世界的に競争力のある結果が得られた。さらに私は、得られた破砕関数の統計誤差の情報を用い、それが縦偏極パートン分布関数の決定にもたらす影響の大きさを見積もった。この結果は、次年度行う包括的な核子スピン構造の解析への指針を与えるものであった。これらの成果は下記国際会議等で発表した。 2.高速な数値計算フレームワークの構築 背景になっているpQCDが場の理論として持つ種々の特徴に対する詳細な理解に基づき、今まで私が用いていたものよりも格段に数値計算速度の速い解析フレームワークを新たに構築した。これによって、単に既存の結果のクロスチェックが独立に可能になったのみならず、既存のフレームワークでは計算時間の制約から実行することが容易ではなかった、複雑な計算プロセスを要求する様々な散乱過程の数値計算を短時間で行うことが可能になった。これに伴い、複雑な散乱過程の実験データを包括的に取り扱う、核子スピン構造の詳細な解析が可能になってきている。これらの解析の結果は次年度において、学術論文、博士論文として発表される。
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Research Products
(6 results)